やたら美化された絵って恥ずかしいよね
これは……
真ん丸の桃のケーキに、かわいい二つの寝癖とつぶらな瞳がついている!?
「ヒヨコちゃんのケーキだっ! うわあぁ! すごい! すごくかわいいよっ!」
さすがベリス親子だよ!
最高にかわいいよっ!
クラスの皆も大興奮で喜んでいる。
食べるのがもったいないよ。
ばあばに頼んで永遠に腐らなくしてもらって幸せの島のわたしの部屋に飾りたいよっ!
「はい。では皆様。これからお別れ会を始めたいと思います。ですが『お別れ会』では寂しいので……『楽しい思い出を作る会』にしたいと思います」
ベリス王子が話し始めたね。
これは長くなりそうだよ。
「思い返してみれば……皆様とは、ひと月ほどのお付き合いでしたがとても濃厚な日々を過ごさせていただきました。『緋色の殿下』という呼び名まで考えていただき……それから……それで……」
あぁ……
もう五分は話しているよ。
クラスの皆は涙を流しながら聞いているね。
ベリアルとゴンザレスとスーたんはもう桃のケーキを食べ始めているけど……
さすがにわたしまで食べたらダメだよね。
「モグモグ……なんだ、ぺるみは食べないのか? もったいないな。オレが食べてやるよ」
ベリアルがわたしの桃のケーキまで食べようとしている!?
「うわあぁ! ダメダメ! わたしのケーキなんだからっ!」
このケーキは、ばあばに永遠に腐らなくしてもらうんだから!
「なんだ、食べないのかと思った。さっさと食べろ。中のアイスクリームが溶けるぞ」
「分かっては、いるんだけどまだ話の途中だから……」
「ん? 話? あぁ。まだ話してたのか」
「もう五分は話しているよね。でも、クラスの皆が感動しているから、わたしだけ先には食べられないんだよ」
「え? オレ食べちゃったよ! どうしよう……」
「ヒヨコちゃん達は大丈夫だよ。でも、さすがにわたしはね」
「そうか。良かった。でも、この話はいつまで続くんだ?」
「うーん……まだあと五分くらい?」
「うわ……先は長いな」
「……そうだね」
「……!? おい! あれを見てみろ」
ん?
ベリアルのパンみたいなかわいい翼が何かを指している?
なんだろう。
「……!? 何あれ!?」
かなり大きい像があるけど……
わたしとベリアルの像だよね!?
確か下描きだって言ってベリアルを抱っこした絵を描いてもらったけど、いつの間にか完成していたんだね。
うわ……
像の隣には、わたしとベリアルのかなり美化された、ひと昔前の少女マンガみたいな絵が飾ってあるよ。
あれは、恥ずかしいね。
美化され過ぎだよ。
「おいおい……あれは酷いな。オレはいつも通りかわいいけどぺるみは目がキラキラし過ぎだろ」
「はあ!? ヒヨコちゃんの瞳も三倍は大きくなっているよ」
「オレはいつでもかわいいんだ。それにしても、ぺるみの目は顔の半分はあるぞ? あんな生き物見た事ないぞ」
「嫌だよ……わたしがそうやって描けって言ったみたいに思われちゃうよ」
「……描き直してもらうか?」
「それをあの親子に頼んだら次は何を要求されるか……」
「確かにそれは怖いな」
「でも、あの絵は嫌だよ」
「まぁ、オレはかわいいからいいけどな」
「いや、ヒヨコちゃんもなかなか恥ずかしい美化をされているよ」
もう、別のヒヨコちゃんになっているし。
ベリアルはつぶらな瞳がかわいいんだから、あれじゃダメなんだよ。
ベリス親子は分かっていないね。
でも、画家が描いたにしては平面的な絵だね。




