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見守る者としての生き方

「でも、最強の魔族は、前ヴォジャノーイ王だろ?」


 イフリート王子は、ハデスに何度もやられているからそう思うのも当然だよね。


「いえ。ハデス様は最恐の魔族であって、最強の魔族は今、吟遊詩人をしているようですよ」


 ベリス王子は知っていたんだね。


「吟遊詩人ってなんだ?」


「はい。人間として旅をしながら暮らしているようです」


「魔族なのに人間として暮らしているのか?」


「はい。厳しい身分制度に苦しむ人間達に愉快な話をして、息抜きをさせているようです」


「『初めからいた者』として人間を楽しませているのか?」


「はい。色々なやり方があって良いのでは? 魔族として暮らす事が正解だとは限りませんから」


「……? それって?」


「我々も魔族ですが人間としてアカデミーに通い、良い友がたくさんできました。イフリート王子もアカデミーは楽しかったでしょう?」


「そうだな。ベリス王子の言う通りだ。今までは人間はただの食糧だったけど、今は違う感情が芽生えたんだ。オレは……人間が好きになった。一緒に遊んだり勉強したり魔術の練習をしたり……それで……何て言うか……上手く言えないけど、人間にも感情がある事が分かったんだ」


 そうだよね。

 群馬にいた頃のわたしもスーパーで買ってきた肉を何も考えずに食べていたけど……

 牛にも豚にも鶏にも『痛い』とか『嫌だ』とか、そういう感情があるんだよね。

 パック詰めされて肉の形になっていたからっていうのもあるんだろうけど……

 でも、どんな生き物にも心はあるんだよね。


 今まではイフリート王子にとって人間は肉でしかなかったけど、人間と友達になったから食べるのが辛くなったりしないのかな?

 でも……そんな事を魔族じゃないわたしが尋ねるのは違うよね。


「きっとその吟遊詩人になった魔族は、自分にしかできない方法で人間を笑顔にしているのでしょう」


 ベリス王子が優しく微笑んでいるね。

 いつもは作り物の笑顔だけど、今のこの笑顔は心からのものみたいだ。

 前から思っていたけど……

 ベリス王子は自分と境遇が似ているイフリート王子の事を弟みたいに大切にしているよね。


「自分にしかできない方法?」


 イフリート王子がベリス王子に尋ねているね。

 ベリス王子は何て答えるんだろう?


「わたしもイフリート王子も全く同じ『見守る者』になる必要はありません。ぺるみ様やベリアルやゴンザレスがそれぞれ違うやり方で『見守る者』をしているように、我々もそれぞれに合ったやり方を見つけるのです」


「オレはオレのやり方を見つける……? そうか。オレらしいやり方で……ベリス王子、ありがとう! オレはオレらしい『見守る者』になるよ!」


「きっと素晴らしい『見守る者』になれますよ」


 ベリス王子とイフリート王子は全然性格が違っているのに、どうしていつも一緒にいるのか不思議だったけど……

 兄と弟みたいな素敵な関係なんだね。

 

 少し前までは、やんちゃなイフリート王子と商売上手なベリス王子だと思っていたけど……

 今はかなり印象が変わったよ。

 

 イフリート王子は亡くなった母親の事で苦しみ続けている父親を気遣っていて、ベリス王子は心を壊したお姉さんを治療しようと人間相手に商売をしていた。

 二人ともすごく優しいんだ。

 こんなに素敵な二人が『見守る者』になってくれるなんて、すごく心強いよ。

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