スーたんの偽りのかわいさは周りにバレバレだよね
「……? なぁ、どうしてスーたんは性格がコロコロ変わるんだ?」
イフリート王子は魔族で耳がいいから、第三地区でスーたんが小声で話していた時に聞いていたんだね。
「ははは。それは自らを愛らしく見せる為ですよ」
ベリス王子は全部知っていたんだね。
「……? 何の為に?」
「イフリート王子が火の魔術の鍛錬をするのと同じですよ。スーたんは自らを愛らしく見せる為に日々鍛錬しているのです」
ベリス王子……
そんな言い方をすれば立派に聞こえるけど、スーたんは自分が世界で一番かわいいと思っているただの甘えん坊なんだよ。
「ふーん……そうなのか。よく分からないけど鍛錬なら応援しないとな。オレは今日から『見守る者』になったんだから」
イフリート王子は優しいんだね。
そういえば前に海に落ちたジャバウォックの事を助けていたよね。
王子は、きっと立派なイフリート王になれるよ。
「ははは。そうですね。では、わたしも応援しましょう」
ベリス王子も?
何の見返りもなく?
うーん……
怪しいね。
「でも、どうやって応援するんだ?」
「そうですねぇ……これ以上無いほど甘やかしてみてはどうでしょう」
「なるほど。甘やかすんだな。でも、あのスーたんの種族が魔族最強なんて信じられない。見るからに弱そうだぞ?」
「ははは。それはあの愛らしい種族を守る為の優しい嘘だったらしいですよ」
ベリス王子は父親のベリス王から聞いたのかな?
優しい嘘……か。
そうだね。
『初めからいた者』が協力してモフたん族を陰ながら守っていたんだよね。
小さくて弱いモフたん族をずっと守っていた『初めからいた者』……か。
遥か昔にオケアノスが亡くなってから、モフたん族を守る事で寂しさを紛らわせていたのかな?
「じゃあスーたん達は本当は弱いのか?」
「人間より弱いでしょうね。その辺にいる小魚よりも弱いはずです」
「はあ!? そんな魔族がいるなんて……今までよく、生き延びてきたな。何を食べてきたんだ? 狩りなんてできないだろうし」
「そうですねぇ。『自分達が最強だと思っている一番弱い魔族』ですからねぇ。周りで守っていた魔族は、かなり大変だったようですよ? ほら、自分達は強いと思い込んでいるから偉そうな態度で周りを怒らせる事もあったようです。襲われそうになるたびに『初めからいた者』が陰ながら助けていたらしいですよ。食事や身の回りの物も波打ち際に流れ着いたようにして、こっそり置いていたようです」
「……なんか、大変そうだな。もう教えてやったらどうだ? 本当は一番弱い魔族だって」
「ははは。それは、なかなか難しいのでは? 数千年間自分達が最強だと思っていますからねぇ」
ベリス王子の言う通りだね。
話したところで受け入れてもらえなそうだよ。




