恋が叶うプリンアラモード?
「ペリドット様っ!」
魔術科のマリーちゃんが駆け寄って抱きついてきた。
でも……
「マリーちゃん……泣いているの?」
身体が小さく震えているよ。
「わたし……もうペリドット様に会えなくなるなんて……悲しくて……うぅ……」
「わたしもだよ。すごく悲しいよ。でも……今日は笑顔で過ごすって決めたの」
「笑顔で……?」
「うん。笑顔のわたしを思い出して欲しいから」
「……笑顔のペリドット様を?」
「でも、朝から泣きっぱなしで全然ダメなの」
「ペリドット様……うぅ……わたしも我慢できません……」
「わたしもだよ……」
ダメだ。
また涙が出てきちゃったよ。
「わたし……初めてペリドット様に話しかけた時の事……昨日の事みたいに覚えています。川を塞き止められたわたし達の為に国に来てくれて……本当に感謝しています」
「マリーちゃんとジャックの国はすごく素敵で大好きだよ」
「ペリドット様……」
「明日の『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』楽しみにしているね」
「ペリドット様達のおかげでジャック達が出場できるようになってすごく嬉しいです」
「ふふ。ジャック達が頑張ったからだよ。貴族から嫌がらせはされていない?」
「……出場できなかった二人の貴族には多少嫌みを言われますけど、あれくらいなら我慢できます」
「そう……」
結局その二人の貴族は、魔塔の人間に魔術を習っても上手く魔力を使えなかったらしい。
人間達の魔力は年々弱くなってきているから、魔塔にいる人間の魔力も弱いんだ。
かなりの神力と魔力があるわたしやベリアルや王子達が教えた平民の方が上達するのが早いのは当然だよね。
「ペリドット様?」
「うん? 何かな?」
「わたし……ジャックにプロポーズされたんです」
「ええ!? そうなの!? おめでとう」
「あの時のプリンアラモードのおかげです」
「プリンアラモード? 偶然じゃないかな?」
「それが……(あのプリンアラモード……アルストロメリア公爵令嬢とプルメリアの殿下も食べたんですよね? わたし見ちゃったんです。誰もいない木陰でお二人が口づけをしているのを……)」
「ええっ!?」
「(ペリドット様! 声が大きいですよっ。それから会話も少し聞こえてきて……)」
「(何? どんな?)」
「(『危険だからリコリスにいて』とか『わたしも行きたい』とか。あと『ずっと一緒にいたい』とかも……)」
レオンハルトがプルメリア王妃を討つ日が近づいているからアンジェリカちゃんが心配しているんだね。
やっぱり二人はそういう関係になっていたのか。
「そっか……そんな話を」
「だからあのプリンアラモードは本当に恋が叶う食べ物だったんです!」
「大興奮だね……」
「はいっ! あ、そうだ。あの噂を知っていますか?」
「……? 噂?」
「ペリドット様のクラスの先生とジャック先生が手を繋ぎながら宝石店に入って行ったのを平民の友達が見ていたんです」
「ええ!?」
「もしかしたら婚約指輪を買いに行ったのかもしれませんね」
婚約指輪!?
「……すごい。本当に恋が叶うプリンアラモードだったのかも……」
不思議な事があるんだね。
まぁ、偶然だとは思うけど……




