友達のおじいさんはわたしと同じ変態臭がする
「前に……進む、ですか?」
公爵が不思議そうな表情で尋ねてくる。
「うん。大切な家族と笑っていたいから。わたしにはね? 家族がいっぱいいるんだよ? 血の繋がりの無い家族もいっぱいいるの。その家族はわたしが泣いていると一緒に泣いてくれて、笑っていると一緒に笑ってくれるの。だから……わたしは、わたしのせいで大切な家族が泣く姿を見たくないんだ。ずっと一緒に笑っていたいの」
「……一緒に笑う?」
「うん。それに、公爵は気づいていないかもしれないけど、さっき女神様の話をしている時、すごくニコニコしていたよ?」
ニコニコよりはニヤニヤだった気もするけど……
わたしと同じ変態臭がしたよ。
「え? わたしが……ニコニコ?」
「うん。無意識だったんだね。だからね? 思うんだけど、きっと無意識にアンジェリカちゃんにも笑いかけていたんじゃないかな? わたしが家族に支えてもらって笑えるようになったみたいに、公爵も家族に支えられていつの間にか笑顔になっていたんじゃないかな?」
「……誰かに言われるまで気づかないなんて、わたしは愚かですね」
「そんな事は無いよ? だって自分が笑っている顔なんて自分じゃ見えないからね」
「え? あぁ……確かに……ぷっ……ははは」
笑っているね。
変な事を言っちゃったかな?
でも……
素敵な笑顔だね。
わたしまで嬉しくなっちゃうよ。
「ふふ。公爵笑っているよ?」
「ペリドット様もですよ? ははは」
「え? 本当だ! あははは」
やっぱり、公爵とは仲良くできそうだよ。
腹の探り合いもありそうだけど、それ以上に楽しい事がありそうな予感がするよ。
それにしても王族は苦労しているんだね。
群馬で見ていたお姫様が出てくる絵本には、そんな事は描いていなかったよね。
『キラキラのドレスを着て舞踏会で踊って、優しい王子様と幸せに暮らしました』っていうのは物語の中だけなのかな?
実際の王様や王子様は命がけでその座を守っていたんだね。
毎日豪華に暮らしていられるけど、心はボロボロなのかな?
食べる物が無いけど家族愛に恵まれた平民とどっちが幸せなのかな?
心も身体も全てにおいて満たされて過ごしている人なんて一握りなんだろうね。
あ……
さっきまでフカフカのソファーで仰向けに寝転んでいたベリアルのパンパンのお腹が元通りになっているね。
「なぁ! ぺるみ! 早く露天商市場に行こう! お腹空いた!」
ベリアルのつぶらなキラキラの瞳がわたしを見つめている。
くぅぅ!
堪らないよ!
最高にかわいいよ!
「うん! おいしい物をいっぱい食べようね。でもお土産を買ってからね?」
よし!
第三地区の皆が喜びそうなお土産を見つけよう。
喜んでくれるといいな。