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イフリート王子とペルセポネ(1)

 学術科の皆とお別れをすると魔術科に向かう。


「ぺるみ……大丈夫か?」


 イフリート王子が心配そうに話しかけてくれたけど……


「うん。大丈夫。泣いちゃってごめんね」


 泣かないって決めていたのに……

 やっぱり我慢できなかったよ。


「いや……それだけぺるみが人間を好きって事だろ? 泣くのを我慢する必要なんてないさ」


「……ありがとう。イフリート王子はクラスの男の子達とかなり仲良くなったみたいだけど……」


「あぁ。そうだな。少し前までは人間なんて食糧だと思っていたけど……今は少し違うかな。もちろんイフリート族は人間を食べるけど……アカデミーの奴らは……食べたくないんだ」


「……そっか」


 わたしと同じ考えなんだね。


「変だよな。他の人間はどうなってもいいのにアカデミーの奴らは嫌なんだ」


「……わたしも……それで悩んでいるの」


「……え?」


「わたしも、知り合いが傷つくのは嫌なのに、知らない人間はどうなっても構わないって考えちゃうから……」


 こんなので本当に『見守る者』になれるのかな?


「それは……仕方ないんじゃないか?」


「仕方ない?」


「だって……知らない奴なんて、会った事もないんだから何の感情もないのは当然だろ」


「……それは……そうなんだけど……」


「ぺるみは『この世界を見守る者』になるんだよな?」


「……うん」


「だから、悩んでいるのか? 皆を愛さないといけないって」


「……うん」


「そんなの無理だろ」


「……え?」


「だって……どう頑張ったって嫌いな奴を好きになんてなれないだろ? 全てを受け入れて全てを愛するなんて無理だ。そんな夢みたいな事を言っている奴なんて上っ面だけの信用できない奴だろ? それに、会った事もない奴を愛する? そんな事は、あり得ないだろ」


「王子……」


「胸を張れ! 前を見ろ!」


「……? 王子?」


「父上がオレに言うんだ。オレが進むべき道に迷うと怖い顔で……でも、悲しくも見える顔で……」


「イフリート王が……?」


「父上は……母上があの時、魔王に拐われてからずっと苦しんでいたんだ。自分が種族王だから母上が拐われたんだって。でも、母上が亡くなってからはもっと苦しんで……」


「……そうだったんだね」


 苦しんでいたのはベリス親子だけじゃなかったんだ。


「オレは……母上に似ているんだ。父上にそっくりだけど、笑った顔は母上似だって自分でも思うんだ。だから父上はオレを見ると悲しそうな顔をする事があって……きっと母上を思い出して辛くなるんだ」


「……そう」


 イフリート王子はいつも元気いっぱいだから……

 一人でずっと苦しんでいたんだね。

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