かわいいモフたん(7)
「ねぇ、お父さん?」
「うん? 何かな?」
「人間に魔素入りの小瓶を渡したのは本当にモフたん達なのかな?」
「え? ああ、確かにそうだね。このモフたん達には無理だろうね。誰かが手助けしていたのかな? でも、他の『どこの傘下にも入らない魔族』が人間を苦しめる手助けをするとは思えないし……」
「モフたん達とは別にそれをした魔族がいるって事?」
こんなにかわいいモフたん達に罪を擦りつけようとしている魔族がいるっていう事?
「ふふ。それならもう解決したわ」
バニラちゃんが吉田のおじいちゃんと一緒に帰ってきたね。
「解決って?」
「ハデスがフワフワの魔族の島に結界を張りに行ったら偶然近くに、人間に小瓶を渡した魔族がいたのよ。ハデスはすぐに魔王に知らせに行こうとしたんだけど、フワフワの魔族達に捕まっておもてなしを受けながら寝ちゃって……ふふ。ハデスもフワフワの魔族もかわいい寝顔だったわ。ハデスは幸せの島のベットに寝ているわよ。行ってあげて」
「うん。ありがとう」
バニラちゃんが心を聞いてお手伝いしてくれたのかな?
ハデスがいる時にそんなに都合よく小瓶の魔族が現れるなんてあり得ないし……
(うふふ。わたしが手伝ったのは少しだけよ)
『わたしが』?
他にも誰か手伝ってくれたの?
(時が来れば分かるわ。魔族がね……フワフワの魔族の島に魔素入りの小瓶を隠して罪を擦りつけようとしていたの。ベリス王が小瓶の事を調べ始めたのを知って慌てたようね。現場にハデスがいたからあっという間に始末できたわ)
……始末?
えっと……
ハデスは罪に問われないよね?
(大丈夫よ。ハデスがやらなくても他の魔族がやっていたわ)
どうして?
その魔族は皆から嫌われていたの?
(うーん……弱い魔族を殺して魔素を集めていたの。それが知れ渡るのは時間の問題だったのよ)
そんな……
じゃあ、小瓶の中の魔素は……
何の罪もない魔族の亡骸だったの?
(ええ。かわいそうな事をしたわ。あとはハデスから聞いてちょうだい。もう目覚めそうよ?)
……うん。
色々ありがとう。
「ふふ。詳しい事はハデスが目覚めたら聞くといいわ。わたしもベリアル達と寝てくるわ。今日は良く眠れそうよ」
「うん。……皆、今日は本当にありがとう。信じてもらえて嬉しかったよ」
「ぺるみ……立派に育ったね。急に大人になったようで寂しいよ」
お父さんが嬉しそうに……でも少しだけ寂しそうに微笑んでいる。
「ほれ、早くハデスちゃんの所に行け。目が覚めて幸せの島にいたら驚いちまうからなぁ」
おばあちゃんの言う通りだね。
「うん! 皆、おやすみなさい!」
空間移動で幸せの島の家に着くと……
「ペルセポネ……?」
ハデスがちょうど起きたみたいだね。
「ふふ。フワフワの魔族達に捕まって大変だったらしいね」
「ああ……幼子の世話は大変だな。だが……嫌な気持ちにはならなかった。むしろ心地良かった」
「そっか。……ありがとう」
「……え?」
「うん……えへへ。わたしと結婚してくれてありがとう」
「……わたしこそ。ペルセポネ……わたしはペルセポネに出会ってからずっと……幸せだ」
「……わたしもだよ?」
ベットに座ってハデスに抱きつくと優しく口づけをする。
久々にハデスに口づけできたよ。
最近は、うさちゃんにずっと邪魔されていたから……
ん?
あ……
ハデスが……
あぁ……
これが天界で見た紙に描いてあった……
ハデスの優しくて温かい手……
わたしを見つめる真剣で甘い瞳……
熱い吐息……
頭がクラクラする。
ハデス……
他に何も考えられない……
大好き……
もう二度と離れ離れになんてならないよ。




