かわいいモフたん(4)
(ぺるみ……あぁ……ちょうど良かったわ)
バニラちゃん?
声が疲れきっているよ?
(えぇ……フワフワの魔族におもてなしをされていてね。と言ってもおままごとみたいな感じだけど)
おもてなし?
おままごと?
(『木の実をどうぞ』とか『水浴びはどうだ』とか『寒くはないか』とか。普段お客さんが来る事が無いらしくて大喜びなの)
うわあぁ!
いいなぁ!
わたしも、おもてなしをされたいよ。
かわいいんだろうなぁ。
(でも、不器用でね。色々壊したりして、後片づけが追いつかないの)
それは大変だね。
あ、ハデスは?
どうしているの?
(あぁ……ハデスは優しいから色々断れなくてね。今はフワフワの魔族達を寝かしつけているわ。でも、服をしっかり握られて帰れないのよ)
え?
寝かしつけているの?
あはは!
ハデスは怖がられがちだけど本当は面倒見が良くて優しいからね。
(ふふ。良いパパになりそうね)
パパ!?
えへへ。
うん。
じゃあ、モフたんはバニラちゃん達と入れ替わりでこっちに来ちゃったんだね。
(そうみたいね。『どこの傘下にも入らない魔族』や遥か昔からいる魚達が幸せの島に着くまでずっと手助けしていたみたいよ? フワフワの魔族は飛べないし体力も無いから、偶然通りかかったように見せかけて魚が幸せの島まで運んで、途中で襲われないように魔族達が見守っていたようね)
愛されているんだね。
それで少し離れた所に魔族が隠れていたんだね。
(そうね。『どこの傘下にも入らない魔族達』は下半身だけだった魔族を種族王にしたかったらしいの。でも、下半身だけだった魔族はフワフワの魔族を種族王にしたがったようね。そうすれば傘下に入る魔族全員で堂々と守れるでしょう?)
確かに。
隠れて守る必要がなくなるよね。
なるほど。
前に聞いた『誰が種族王になるかで揉めた』っていうのはこういう事だったんだね。
(フワフワの魔族は他の魔族がいると強がって疲れるだろうから、種族王にしたらかわいそうだという考えもあって結局ズルズルとここまで来てしまったようね)
じゃあ、モフたんは孤立していたわけじゃなくてずっと守られていたんだね。
(そうね。安心したかしら?)
うん!
モフたんが誤解されていたんじゃなくて良かったよ。
(ふふ。ぺるみはかわいいわね)
でも……バニラちゃんもおばあちゃん達も心を聞いて知っていたんだよね?
(ええ。でも、ここまで『どこの傘下にも入らない魔族達』が頑張って築き上げてきた事をわたし達が簡単に教えるのは違うと思ったのよ。黙っていてごめんなさい)
バニラちゃんが申し訳なさそうにしているね。




