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きちんと話して前に進みたいの(2)

「決まり事をきちんと守り続けるのは大変だよね。それを数千年間も……すごいよ」


「だが、そのせいで我ら一族は孤立していった」


 フワフワの魔族は孤立していたんだね……

 こんなに、かわいいのに……


「辛かったね」


「……ああ。辛かった。だが……全ての種族が『理』を忘れ去ればこの世界が消えてしまうのではないかと……『あの子』を捨てた奴の決めた『理』を守るのは気に入らなかった。それでも、その『理』を守る事でこの世界を守れるのなら……だから、オレ達の種族は……『あの子』との思い出の詰まったこの世界を守る為に……嫌われ役になる事にしたんだ」


 キラキラの瞳から大粒の涙が溢れ続けている。

 ずっとずっと苦しみの中で暮らしていたんだね。


「……辛かったね。辛かったよね。あなたはすごいよ。皆に合わせる方が楽なのに、流される方が楽なのに……この世界の為に悪者だって思われても『理』を守り続けてきたんだね」


「……! そんな事を言われたのは……初めてだ」


「わたしも……『この世界を見守る者』になるって決めたの」


「……え?」


「あなたも一緒に……見守る者になって欲しいな。協力して欲しいの」


「……オレも?」


「うん。あなたは『理』の通りに、この世界を見守ってきた。でもそれは、かなり辛かったはずだよ。だから、これからは大好きなクッキーを食べながら一緒にこの世界を見守る者になろうよ」


「それでは……オレが今までやってきた事がムダに……」


「ムダなんかじゃないよ! あなた達の種族が『弱い魔族を食べるべきだ』って言ったから皆が前に進めたんだから!」


「……前に?」


「うん。その言葉がなければ今でも『どこの傘下にも入らない魔族達』は前に進めなかったの」


「……お前……本当に『あの子』なんだな。真っ直ぐで純粋で……」


「ベリアルは甘いお菓子が大好きなの。だから、きっと話が合うよ。ベリス王はオケアノスの子孫だって知っていた? ベリス王の店舗にはおいしいお菓子がいっぱい売っているの。それから……そうだ! プリンを作るから一緒に食べよう? 甘くておいしいの」


「……どうして……こんなに……オレを大切にしようとするんだ? こんなオレを……」


「穏やかに暮らして欲しいの。ずっとオケアノスを愛し続けてくれている事を知ったから。……あなただけが悪者になる必要はないんだよ?」


「……悪者になる必要は……ない……か」


「……抱っこしてもいい?」


「……え?」


「ずっと身体が震えているよ?」


「色んな感情が溢れてきて……震えが止まらないんだ」


「抱っこさせて? 誰かに抱きしめられると心が温かくなるから。落ち着くと思うよ?」


「……! 『あの子』が赤ん坊だった時……オレを抱きしめるとどんなにぐずっていてもすぐに泣き止んだ。懐かしいな……」


「あなたはモフモフしているから気持ち良かったんだろうね」


「モフモフ……?」


「うん。フワフワですごくかわいいから」


「フワフワですごくかわいい事を……モフモフと言うのか」


「ふふ。そうだよ」


「モフモフ……オレが……モフモフ……あ! しまった!」


「……? どうかしたの?」


「受け入れてしまった!」


 受け入れたって、何を?

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