表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1136/1484

きちんと話して前に進みたいの(1)

「あなたには、わたしが誰だか分かる?」


 全部話さないと……

 わたしがオケアノスだって話さないと。


「……魔王の娘で聖女だった。でも今は天族……」  


 フワフワの魔族が大粒の涙を流しながら答えてくれる。

 でも、それは今欲しい答えじゃないんだよ。

 

「そうだよ。……わたしが誰だか分かる?」 


「……え? だから……魔王の娘で……」


「本当に分からない?」


「……?」


「『あの子』って言えば分かるかな?」  


「あの子……? なぜお前が『あの子』の事を知っている?」


「それは……わたしが『あの子』だからだよ」


「そんな……まさか……あり得ない」


「本当に分からない?」


「……お前が『あの子』? 『あの子』は……数千年前に……死んだ。人間に傷つけられ、魔素に苦しめられ……見ていられなかった。オレのかわいい『あの子』……今でも変わらず愛している」


「あなたが愛した『あの子』はわたしの魂なの」


「魂……?」


「天族のわたしの身体には魂が無くて……その身体に吉田のおじいちゃん……数代前の神様が『あの子』の魂を入れ込んだの」


「お前の魂が……『あの子』?」


「うん。『あの子』の名は『オケアノス』。オケアノスの魂はわたしの中と、バニラちゃんの中にそれぞれ入っているの。そしてオケアノスが創り出した『心』はベリアルになった……」


「……? よく分からない……魂? そんな事があるのか?」


「ゆっくり話すよ。今まで何があったのか……」


「ゆっくり……?」


「うん。だって……時間は、いっぱいあるんだから」


「時間……?」


「数千年前……オケアノスは苦しみの中で亡くなった。それからあなたはずっとずっとこの世界の全てを恨んできた。でも、今はわたしもあなたもここにいるんだよ?」


「……それは……そうだが……」


「でも、どうして人間じゃなくて弱い魔族を食べるべきだって言ったの?」


「このままでは魔族は人間のように弱くなってしまう。魔族は人間よりも強い立ち位置にいなければいけないんだ」


「……? どうして?」


「それが、この世界の『理』だからだ」


「『理』……そうだね。この世界は魔族が人間を虐げる為に創られた。あなたはそれを守り続けようとしているんだね」


「オレは……この世界を守らなければいけないんだ。甘い事を言っている他の『初めからいた者』のやり方ではこの世界は滅亡してしまう。『あの子』が暮らしたこの世界を守らなければ……ずっとそう思ってきた」


「……うん。あなたはあなたのやり方で、この世界を守ろうとしてきたんだね。オケアノスが生きたこの世界を……」


「だが……ずっと迷っていた。魔族は人間を食べる生き物だ。それなのに魔族を食べるなんて許されるのか? それに……オレ自体……果物の方が好きなんだ。最近は……クッキーも……おいしい……」


「ふふ。味覚は変わるものだからね。それと……あなたは真面目なんだね」


「……え? オレが真面目?」


 フワフワの魔族が驚いたように呟いたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ