血は争えない……?
ベリアルが部屋に戻ると、幸せの島に歩いて向かう。
星が綺麗だ。
雲ひとつない。
常夏の幸せの島も夜になると少しだけ涼しい風が吹く。
海水を固めた橋を一人で歩いていると大量の赤い物が海に漂っているのが見える。
「……? なんだろう?」
え?
まさか……
赤青クラゲ?
そんな……
赤青クラゲが赤く光り続けるっていう事は……
かなり危険な状況?
今は何も起きていないけど……?
ん?
なんだろう?
五メートルくらい先で、何かが結界の外から入り込もうとしている?
でも、入れないみたいだ。
って事は……
あれが悪意がある『誰か』?
この辺りに張ってある結界は、悪意がある者は入れなくて、中の音が結界の外に漏れなくなっているんだよね?
じゃあ、やっぱり悪意がある誰かが無理矢理入り込もうとしているの?
どうしよう。
誰かに知らせる?
人間は、この海域には簡単には入れないから魔族だよね?
あ、天族の可能性もあるかな?
うーん?
とりあえず、吉田のおじいちゃんかおばあちゃんに知らせ……
って……
んん!?
ちょっと待って!?
結界越しに、魚に乗って近づいてきたからよく見えるよ!?
かわいいっ!!
なんなの!?
暗くて色まではよく見えないけど、真ん丸いのフォルム……淡いピンクみたいな紫みたいなフワフワの毛にかわいい手足がついている!
瞳はキラキラに輝いて……
ベリアルも超絶かわいいけど、この子も激かわだよ!
ああ!
モフモフしたい!
モフモフしたいっ!
(ぺるみ……こんな夜中にどうしたんだ? 興奮し過ぎると身体に良くねぇぞ?)
(ぺるぺる……見ず知らずのモフモフに誘惑されたんか? ベリアルに、ぺるぺるが浮気してるって言っちまうぞ?)
(あ、その魔族は……)
吉田のおじいちゃんとおばあちゃんとゲイザー族長がわたしの心に話しかけてきたね。
ゲイザー族長?
この超絶かわいい子は魔族なの?
かわい過ぎでしょ!?
(ぺるみ様の心を聞いたから分かります。そこにいる魔族は『初めからいた者』ですよ。そんなかわいい容姿の魔族は他にはいませんからね)
ええ!?
じゃあ吉田のおじいちゃんが創り出したんだよね?
お尻ちゃんとは方向性が全然違うけど……
(あの頃のじいちゃんは、どうかしてたんだ。でも、お尻ちゃん一族は皆容姿を変えたから、もうお尻ちゃんじゃなくなったけどなぁ)
吉田のおじいちゃんは、すっかりいつも通りだね。
お尻ちゃん……
あれはあれでかわいかったけど。
(そうだよなぁ? じいちゃんもかわいいと思ったんだけどなぁ。本人達は嫌がってたよなぁ。残念だ)
わたしと吉田のおじいちゃんは好みが似ているっていう事かな?
ん?
ちょっと待って!?
まだわたしが群馬で月海だった頃……
そうだよ!
わたしにお絵描きを教えてくれたのは吉田のおじいちゃんだったんだ!
わたしを膝に座らせてクレヨンを持たせて『絵はこうやって描くんだぞ』って……
(ん? そうだったなぁ。小さかった頃の星治にもよく絵を描いてやったなぁ)
お父さんにも!?
そういえば、おばあちゃんがわたしの絵はお父さんにそっくりだって言っていたような……




