ベリアルと砂浜で~後編~
「明日の夜……お兄様とおばあ様に会いに行ってくるよ」
辛いけど、人間は天族とは生きられる長さが違うから……
覚悟はしていたつもりだけど、やっぱり悲しいよ。
「本当にこれで最後にするつもりか? 二人には、これからも会いに行ってもいいんじゃ……」
ベリアルが心配そうに尋ねてくれたけど……
「……最期の時に……会いに行きたいと思っているよ」
「ぺるみ……最期って……そんなの辛過ぎるだろ?」
「あ、でもレオンハルトの件が解決したら、シャムロックのおじいちゃま達が幸せの島に遊びに来てくれるんだよね……」
「こんなに大好きなのに……本当にそれでいいのか?」
「……うん。いっぱい悩んで、いっぱい苦しんで……やっと決心して……でも……やっぱり……辛いよ」
あぁ……
泣きたくないのに……
涙が出てきちゃったよ。
「そうか……泣け。いっぱい泣いてスッキリしたら……いっぱい笑おうな。シャムロックのばあちゃん達にぺるみの笑顔を思い出してもらえるように」
「ベリアル……うん。わたし……明日……きちんと笑えるように……頑張るから……今だけ泣かせて……」
「ああ。今は泣け。特別に抱っこさせてやるからな」
「ベリアル……」
ベリアルを抱きしめるとフワフワで柔らかくて心が温まっていくのを感じる。
わたしよりもずっとずっと苦労してきたベリアルは『オケアノスの心』だったんだよね。
「今だけ特別に髪を撫でてやるからな」
ベリアルのパンみたいなかわいい翼で撫でられると、心が落ち着いてくる。
「……ありがとう。わたし……元気が出てきたよ」
「……そうか?」
「今日は天界で眠る日だから、もう行くね。いっぱい泣いてごめんなさい」
「気にするな……ゆっくり休め」
「うん……その前に一度幸せの島に行ってくるね」
「埋葬されてる聖女に『おやすみ』を言ってくるんだな」
「……うん。ベリアル……?」
「ん? なんだ?」
「わたし……立派な生き方とか……よく分からないけど……これだけは言えるよ」
「……ん?」
「わたしは人間が大好き。魔族も大好き。天族も大好き」
「……そうか」
「だから……皆が笑顔でいられるような未来がくるように願っているの」
「……そうだな。大好きな皆が笑顔で暮らせる未来……それが『皆が幸せな未来』だよな」
「……うん」
「一緒に見守ろうな。この世界を……」
ベリアルのつぶらな瞳が真っ直ぐにわたしを見つめてくる。
「ベリアル……」
ベリアルの小さいフワフワの身体から元気をもらえたから……
わたし、頑張れそうだよ。
遥か昔のオケアノスも、創り出した『心』にこうやって慰められていたんだね。




