神官も人間だから寄付金が欲しいよね
「……もうすでに魔族を護衛につけていたのですか?」
お!
公爵……やっぱり言ったね。
イフリート王の言った通りだ。
海賊の魚人族は上手く立ち回っていたから、リコリス王国にいる事はばれてはいないはず。
海賊が王宮に出入りしている可能性があるから、家臣の誰かが『魔族の気配がする』ってお兄様を牽制したんだ。
神殿から来た人間も魔族の気配がするって言ったらしいけど人間には今その場にいない魔族の気配を感じるのは難しいはず。
寄付金が欲しくて言った嘘なんじゃないかな?
神殿は寄付金で成り立つ機関らしいからね。
神殿には少数だけど微量の神力を持つ神官がいるらしいんだよね。
だから自分達がいれば魔族が嫌がって国から出て行くと思っているんだ。
国を魔族から守って欲しければ寄付金の上乗せをしろっていう事かな。
実際は魔族にとって微量の神力なんて全然怖くないけどね。
本来なら聖女は神殿にいるはずらしいけどわたしは魔族の中で育ったから行った事は無かったけど。
ココちゃんのおばあちゃんは聖女では無かったけど神力はあった。
アルストロメリアに行かずに神殿に行っていれば違う未来があったのかな?
大国と神殿は仲が悪いらしいんだ。
アルストロメリアはココちゃんのおばあちゃんを引き渡す代わりに神殿に多額の寄付をしたみたい。
皆、酷いよ。
さてと、また嘘をつかないとね。
本当はアンジェリカちゃんとココちゃんに魔族の護衛はつけていなかったけど、神官が感じた魔族の気配がわたしがつけた護衛だっていう事にすれば海賊の魚人族の存在を隠せるはず。
「そうだよ? アンジェリカちゃんとココちゃんを守る為に魔族に見守ってもらっていたの」
「では、神官が感じた魔族の気配とは護衛の魔族のものでしたか」
完全には信じていないだろうけど、とりあえず今はこれでいいだろうね。
「うん。これ以上被害者を増やさない為に魔族にお願いしたの」
本当は拐われた令嬢達は海賊の島で生きているけど、これは秘密だからね。
「わたしもアンジェリカを守る為に護衛をつけてはいましたが……不安がないと言えば嘘になります。実は……アンジェリカを拐おうとした二人が牢獄で不審死しまして……」
海賊の魚人族も言っていたね。
闇の力を使える人間がいるらしいけど。
公爵はどこまで知っているんだろう?
探ってみるか。
「不審死? それは……?」
「はい。その前に……アンジェリカが今生きていられるのはペリドット様のおかげです。心より感謝申し上げます」
「あれは、わたしじゃなくて……ご近所さんというか、なんというか……」
吉田のおじいちゃんが助けたから、わたしじゃないよ?
「あぁ……もちろん拐われそうになった時もそうですが、陛下からも……といいますか……」
あぁ……
そうだったね。
見るからに怪しい『ルーと愉快な仲間達』(特にわたしと吉田のおじいちゃん)が牢に入れられそうになったと知った(シスコンの)お兄様が、関わった人間を処刑しようとしたんだよね。
それをわたしが止めた時の話か。