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見守る者(9)

「わたしも……」


 バニラちゃんが穏やかな表情で呟いたね。


「……うん? バニラちゃん?」


「わたしは遥か昔オケアノスだった頃『初めからいた者』にずっと守られてきたの。だから……わたしも仲間に入れてもらえないかしら」


「バニラちゃん……」


「わたしも見守る者になって、今度は守られる側じゃなくて守る側になりたいの。きっと、ぺるみの中にいるオケアノスも同じ気持ちじゃないかしら」


「うん。そうみたいだよ」


「ベリアルとぺるみも……遥か昔『オケアノス』だったわたしと、ぺるみの中にいるオケアノスも……皆、同じ気持ちなのね」


「……うん」


「ぺるみ……ありがとう」


「……え?」


「ぺるみがいなければ世界は変わらなかったはずよ」


「そんな……わたしは何もしていないよ」


「ふふ。ぺるみらしいわね」


「わたしには『わたしらしさ』なんて分からないけど……」


「どこまでも真っ直ぐで……疲れ果てた心を癒してくれる存在……なんて言われたら恥ずかしいかしらね」


「……わたしは、そんなに立派じゃないよ」


「ふふ。そんなところもぺるみらしいわ」


「そう……なのかな?」


 わたしは立派なんかじゃないと思うけど……


「ぺるみ! 焼きマシュマロができたぞ! 早く来ないと全部食べちゃうぞ!」


 ベリアルが少し離れた所から、串に刺さった焼きマシュマロを振って呼んでいるね。

 くうぅ!

 激かわだよ!


「ふふ。早く行かないと本当に全部食べられちゃうわよ。あぁ……ベリアルは今日もかわいいわ」


 バニラちゃんは、ベリアルの事がかわいくて堪らないんだね。

 すごく嬉しそうに笑っているよ。


「うん! ベリアルは毎日超絶かわいいの! じゃあ、行ってくるね」


「ふふ。いってらっしゃい」


 バニラちゃんと、わたしの中にいるオケアノスはこの世界を滅ぼそうとしていたんだよね。

 その二人が『見守る者になりたい』なんて……

 すごく嬉しいよ。

 こうやって一人ずつ見守る者は増えていくんだね。

  

(ふふ。そうね)


 氷の上位精霊のフラウが優しく微笑みながら話しかけてきたね。


(ずっと見ていたわ。頑張ったわね。怪我は平気?)


 うん。

 大丈夫だよ。

 

(代替わり……)


 え?


(気を遣ってくれるのは嬉しいけど……わたし達はこの世界を見守る事が好きなの)


 ……そっか。

 えへへ。

 じゃあ、わたしには見守る者の仲間がいっぱいいるんだね。


(ふふ。そうね。ぺるみ……これから、よろしくね)


 こちらこそ!


(あの、赤ん坊だったルゥがこんなに立派になって……嬉しいわ)


 えへへ。

 これからは今まで守ってもらった分を皆にお返ししたいの。


(辛い事も多いけど、それ以上の幸せをもらえるのが見守る者よ)


 幸せをもらえる?


(ええ。あのかわいい赤ん坊だったルゥ……ぺるみに『見守る者になりたい』と言ってもらえて……すごくすごく幸せよ)


 フラウ…… 

 わたしも、ずっとずっとフラウ達に見守ってもらえて幸せだよ。

 

(ぺるみは見守る者になるけど……これからもわたし達はぺるみを見守るわ。ぺるみはわたし達にとって、孫や娘みたいな存在だから……ぺるみの幸せな姿を見守らせて?)


 わたしが皆の孫や娘?

 すごく嬉しいよ。

『初めからいた者』の皆は、この世界を見守る仲間なだけじゃなくて、大切な家族なんだね。


(ふふ。そうよ。だから、焦らずゆっくり見守る者に慣れてね)

 

 うん!

 皆がいてくれて心強いよ!


 わたしなんかが見守る者になれるのかってずっと不安だったけど……

 ゆっくり慣れていけばいいんだね。

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