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見守る者(4)

「我らは木の実や果物、野菜等を食べている。そしてその姿を人間に見せてきた」


 下半身だけの魔族が穏やかな声で話している。

 やっぱり優しい魔族なんだね。


「……その話は聞いた事があるよ。『魔族より人間の方が怖い』と言っている人間もいたの。『魔族は最近は人間よりも果物の方が好きみたいだ』って言っていたよ」


「そう思わせるまで千年近くかかった」


「……! あなた達は人間と魔族を昔の関係に戻そうとしていたの?」


「ああ。我らはな。だが……あの者は違う」


「あの者? それって……?」

 

「あの者は『初めからいた者』でな。『あの子』の最期に酷く傷つき……他種族や人間を嫌うようになった。特に天族を酷く憎んでいる」


「じゃあ、ここには来ていないの?」


「ああ。我らは、前ヴォジャノーイ王に何度も『あの子』の話をされてな」


「ハデスに……?」


「最近は毎日訪ねてきて『オケアノスの魂がこの世界を見守る者になりたがっている』と……」


「……そうだったんだね。それで、ドラゴンの赤ちゃんが落ち着いたあとも忙しそうだったんだ」


「だが我らにはお前が本当に『あの子』なのか、そして本気でこの世界を見守りたいのかを確かめる方法がなくて……」


「だから、ハデス達に頼んでこの無人島を用意したんだね」


「お前は『あの子』なんだな……あの頃と同じだ。『あの子』は優しくてかわいい子だった。今のお前と同じだ。真っ直ぐて弱々しく見えるが誰よりも心が強い。だが、そんな『あの子』は人間に迫害されて……心を壊してしまった」


「……うん」


「お前は……ペルセ……?」


「ぺるみでいいよ」


「では、ぺるみ。ひとつだけ訊かせてくれ」


「うん?」


「ぺるみは人間と魔族と天族で戦が起きたら、どの種族として戦う?」


「……え?」


 すごく真剣な声だ。

 わたしも真剣に答えないと。


「わたしは遥か昔『オケアノス』だった。そして魂が天族の『ペルセポネ』の身体に入って、異世界の人間の『月海るみ』になったの。それから、この世界に魂だけが転移して『ルゥ』になった。『ルゥ』は人間の聖女だったけど魔族に育てられて……だから、わたしは魔族の事が大好きなの」


「そうか……前ヴォジャノーイ王から聞いている。かなり苦労したようだな」


「わたしは『ルゥ』だった時にずっと考えていたの。わたしがこの世界に転移してきた理由を……まだその頃は自分が天族だったなんて知らなかったから」


「転移してきた理由?」


「うん。魔王になったお父さんは、この世界の魔族の戦を終わらせる為に転移してきた。『じゃあ、わたしは? 』ってずっと考えていて。でも、今のわたしには分かるの。わたしは家族の愛があったから今ここにいるの。不器用だから失敗ばかりして……でも心からわたしを愛してくれる『お父様』がずっとわたしの側にいてくれたの。そして、なんとかしてわたしの魂を異世界に逃がして生かそうとしてくれた『お母様』の想い……その強い二人の想いがわたしを『ペルセポネ』に戻してくれたんだよ」

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