見守る者(2)
「……え?」
吉田のおじいちゃんが少しだけ顔をあげてくれたね。
「ベリス王とベリス王子の顔を見て……? 二人は心からおじいちゃんを大切に想っているんだよ。それと、ベリアルとバニラちゃんも。ほら、ベリアルは泣いているよ。大好きなおじいちゃんが辛そうにしているから自分まで辛くなっちゃったんだよ」
「……ベリアル……じいちゃんのせいで泣いてるんか?」
「違うよ。おじいちゃんの『せい』じゃないよ。おじいちゃんの事が大好きだから涙が出てきちゃうんだよ」
「ぺるぺる……」
「わたしだって……おじいちゃんのひ孫だよ? 群馬では娘みたいに育ててくれて……天界でもずっと愛してくれた。だから……そんな姿は見たくないの。いつものおじいちゃんに戻って欲しいよ。ね?」
「でも……じいちゃんのせいで皆が苦しんで……」
「誰もそんな風には思っていないよ」
「……え?」
「今ここにいる皆は、自分で決めた道を進んでいるんだよ? 確かに創り出したのはおじいちゃんだけど、そこから先は違うでしょう? 皆は自分の未来を自分で切り拓いてきたの。皆はおじいちゃんの所有物じゃないんだよ?」
「所有……物……? 所有物なんて……思っちゃいねぇ。皆は頑張って生きてるんだ」
「……そうだよ。皆は頑張って生きているの。おじいちゃんが創り出したなんて知らずに必死に生きてきたの。だから誰もおじいちゃんを責めたりなんかしないんだよ。皆がお母さんから生まれてくるでしょう? その最初がおじいちゃんだったっていうだけなんだよ」
「ぺるぺる……」
やっと、おじいちゃんがわたしの目を見てくれたね。
「ちょっと待て……」
ん?
お尻ちゃんがわたしに話しかけてきた?
どうかしたのかな?
「どうしたの?」
「他の奴らはいいだろう。だが……オレ達一族は違う!」
お尻ちゃんが真っ赤になって怒っている?
「えっと……辛い思いをしてきたんだよね? わたしでなんとかできるなら……」
「はっ! そんな簡単な事ではない!」
「あ……もしかして……一族皆が戦に巻き込まれたとか? それとも……人間に酷い事をされたとか?」
「そんな事ではない!」
「じゃあ……もっと酷い目に……」
そんな事も知らずに……
誰もおじいちゃんの事を恨んでいないなんて簡単に言っちゃったよ。
「……この容姿のせいで……どれだけ苦しめられているか」
容姿?
下半身だけの容姿の事?
「えっと? 容姿……?」
「皆、陰で笑っているんだろう!?」
「……え? そうなの?」
「だって……こんな尻丸出しで……」
「……? 笑わないと思うけど。服を着ていない魔族もいるし……」
「絶対笑っている! オレはこの容姿なんだぞ!?」
「えっと……わたしはあなたに今日初めて会ったけど、あなたは皆から愛されているんじゃないかな?」
「……え?」
「だって、さっき悲しそうにしていたら他種族の皆が心配していたし。人間もあなたに感謝しているんだよ? この前のテストにあなたの問題が出たの。しかも皆その問題に答えられたんだよ」
「オレの問題が……?」
「うん! リコリス王国の人間はあなたにすごく感謝しているの」
「オレに感謝……?」




