シリシリフリフリマダラス……?
「ぺるみの血で海が浄化されている? それとも……神力が海水に流れている……?」
おばあちゃんが必死に考えているけど……
あ……
少し離れた所に魔族の姿が見える。
「あなた達だね。どこの傘下にも入っていない魔族……」
見た事がない種族だからすぐに分かったよ。
「……ああ。そうだ」
すごく低い声だ。
ん?
身体の大きいモフモフした魔族が話したのかと思ったけど……
話しているのは、抱っこされている魔族?
この姿は……
「……お尻?」
「違ああぁぁう! 断じて尻ではない! 全くなんでこんな姿に創ったんだ!?」
お尻みたいな魔族がかなり怒っているね。
「すまねぇ。あの時は深く考えてなかったんだ」
吉田のおじいちゃんが座り込みながら謝っている?
「これだから天族は嫌いなんだあぁ!」
あれ?
でも、このお尻……
どこかで見たような?
うーん?
「あ! シリシリフリフリマダラスだ!」
リコリス王国の旗に描いてあるお尻だよね?
「やめろお! その名で呼ぶなあ!」
おお……
このお尻ちゃん……
なんだかかわいいね。
「ははぁん。さては自分が尻に似てるのが恥ずかしいんだな?」
ベリアル!?
それはさすがに直球過ぎてかわいそうだよ!?
お尻ちゃんが黙っちゃったし震えているよ。
泣いちゃったんじゃないの?
周りにいる魔族達も心配そうにしているよ。
きっとこの容姿のせいで苦労してきたんだろうね。
でも……
あれ?
「ねぇねぇ。お尻ちゃん? 確か人間のリコリス王国を助けた伝説上の生き物がシリシリフリフリマダラスのはずだよね? じゃあ遥か昔にお尻ちゃんは人間を助けたの?」
「お尻ちゃん……!? あぁ……そんなつもりは無かったんだが……結果的にはそうなった」
「……? 何があったの?」
「はぁ……仕方ない。話してやろう。だが、その前に……お前はオレが恐ろしくはないのか?」
「え? なんで?」
「オレは、かなり強い魔族だ。この容姿だし……それに、怪我までさせてしまって……」
「あはは。そんなの気にしないで。それにわたしの方が強いから全然怖くなんてないよ。むしろ、かわいいかも」
「オレが……かわいい? こんな尻みたいなオレが?」
やっぱり自分でもお尻みたいだって思っていたんだね。
「かわいいよ! ちょっと抱っこさせて欲しいよ。赤ちゃんのほっぺみたいにプニプニしていそうだし」
「赤ちゃんのほっぺ!? 尻ではなくてか!?」
「うん!」
「仕方ない。特別に抱かせてやろう」
お?
かなり嬉しそうに見えるよ?
ちょっと偉そうにしている姿がかわいいよ。
「うわあぁ! 嬉しいよっ! って……あれ?」
お尻ちゃんには足があったんだね。
抱っこしている魔族のモフモフに隠れていたんだ。
わたしに向かって海を歩いてきているけど……
うーん。
脛毛が濃いね。
なるほど。
お尻だけじゃなくて、下半身もある魔族だったんだね。
見た目は人間の下半身にも見えるよ。
じゃあ、前から見たらお尻だけど後ろから見たらアレが……
「すまない。『初めからいた者』よ。ペルセポネは我が妻なのだ。男の下半身を抱かせるわけにはいかない」
ハデスが、やんわり断った!?
まあ、確かに見ず知らずの脛毛が濃い下半身を妻が抱っこしようとしたら阻止したくもなるよね。
「そうか。『あの子』は幸せに暮らしているんだな」
お尻ちゃんがわたしを見ながら呟いた?
でも、口とか目はどこにあるんだろう?
どうやって話しているの?
いや……
深く考えないようにしよう。
でも……気になるっ!




