一体何がどうなっているの?
「はぁ……アカデミーに来るのも今日を含めてあと三日か……」
寂しくて仕方ないよ。
「そんな顔してると置いてくぞ!」
麦わら帽子に虫取り網を持ったベリアルが、アカデミーのクラスルームでプリプリ怒っている。
悲しいはずなのにベリアルを見ていると元気が出てくるよ。
「うん! 今日はクラスの皆と無人島に遊びに行くんだから、こんな顔をしていたらダメだよね」
「そうだぞ! ほら、皆近くに寄れ! 空間移動するぞ」
こうしてわたし達は、おばあちゃんと吉田のおじいちゃんが準備してくれた無人島に来たんだけど……
うーん?
本当にここなのかな?
おばあちゃん達からは青い海に白い砂浜の南国リゾート風無人島だって聞いているけど……
海も砂浜も黒いモヤに包まれている?
しかも、このモヤ……
魔素……?
少し違うような……?
でも、魔素だとしたらルゥが全部祓ったはずだし……変だな。
この世界に詳しいベリアルが場所を間違えるはずがないし、おばあちゃん達がこんな事をするはずもないよね?
「あれ? おかしいな。じいちゃんとばあちゃんは綺麗な島でバーベキューをしたりハンモックで寝られるように準備してくれたって言ってたけど、何も無いぞ?」
ベリアルの言う通りだよ。
それに……
魔族の気配がする?
ベリス王子とイフリート王子も気づいているみたいだ。
「あ、見てください! あっちに荒らされた跡がありますよ」
前の席のジャックが指差した方を見ると……
確かにハンモックらしい布がボロボロになっている。
バーベキューセットも壊されて使えない状態になっているし、食材も腐っている。
誰がこんな酷い事を……
「あぁ……ペリドット様と、最後に楽しい思い出を作ろうとしたのに……」
ジャックが悲しそうな顔をしているよ。
わたしまで悲しくなってきた。
でも……
「大丈夫だよ。わたしには神様が与えてくれた力があるんだから」
これ以上悲しい顔はさせたくないからね。
とりあえず魔素らしいモヤを祓って、荒らされた島の時間を戻そう。
……どうかな?
「うわあぁ! すごい! 黒いモヤモヤが消えて遠くまで良く見えるようになりました! それに綺麗な島ですね。真っ白い砂浜に透き通る青い海!」
「見て、あそこに魚がいっぱいいるよ」
「ハンモックだ! それに、大きい傘もある!」
クラスの皆の嬉しそうな姿に安心したけど……
「さすがに一度腐った物を食べるのはねぇ……」
せっかくおばあちゃん達に準備してもらったのに悪いけど……
魚はいっぱいいそうだから、どこかに果物の木でもないかな?
「あれ? おかしいな……」
ん?
イフリート王子が慌てているみたいだね。
「どうかしたの?」
「あ……いや、それが……火が……」
「え?」
「魔力が完全になくなってるんだ。て言うより……使えなくされた……みたいな?」
「そんな……どういう事?」
『使えなくされた』って……?
「そんな!」
ベリス王子も慌てている?
「まさか……王子も?」
「やっと王太子になれたというのに……」
ベリス王子が膝から崩れ落ちたね。
かなりショックみたいだよ。
このまま魔力が戻らなければ王太子ではいられなくなるはずだし……
そうだ。
ゴンザレス!
ゴンザレス?
あれ?
いつもはわたしの心の声をずっと聞いているのに……
もしかして聞こえていないの?




