魔族と天族はずっと不仲だったから複雑だよね
「さて、では学術科に行きましょうか」
ベリス王子がいつもの作り笑顔で話しかけてきたね。
魔術科を出て学術科に歩き始める。
最近は、魔術科での魔術の練習のあとは学術科に行っているんだよね。
学術科の男の子達に、女の子にモテる方法をベリス王子が教えているんだけど……
「ベリス王子は学術科の男の子達からいくら巻き上げたの?」
ベットとか枕とか化粧水とか、かなりの額を使わせていたよね。
この前はベリス王の店舗で服と靴を大量に買わせていたし。
「ははは。巻き上げただなんて。必要な物を購入していただいただけですよ?」
「……まあ、確かに皆良く眠れるようになって疲れが取れて穏やかな顔になってきたけど」
「ははは。皆さん素敵な好青年ですよ」
「……初めて会った時は独特な雰囲気だったけど、今じゃ爽やかな男の子に大変身したよね」
「個性は大切ですよ? あの頃も良かったですが、今はさらに素敵になりました」
「ベリス王子って誰かを悪く言ったりしないよね」
「ははは。ベリス族は感情を表に出さない種族ですから」
「それでいつもニコニコ笑っているんだね」
「はい。その方が感情を隠せますからね」
「ふーん。わたしなんて常に感情が爆発しているけどね」
「ははは。確かにベリアルが絡むと簡単……いえ、周りが見えなくなりますからね」
「もう! 周りを見えなくさせているのはベリス王子でしょう? いつもベリアルを餌にしてわたしをいいように使おうとするんだから」
「ははは。バレていましたか」
「皆知っている事だよ!」
「あ、そうそう。退学する前にクラスの皆さんと旅行をするのですよね?」
「うん。そうだよ。ベリス王子もイフリート王子も来られる?」
「はい。わたしは行けますよ。おばあ様達が良さそうな無人島を探しているようです」
ベリス王子がいつもの作り笑顔で答えたけど。
おばあちゃん達が旅行の準備は任せておけって言ってくれたんだよね。
「オレも行けるぞ。グリフォン王は行けそうにないな」
イフリート王子の言う通りだね。
今は王様として浮遊島で頑張っているから。
「そうだね。二人も次期種族王なんだね。ベリス王子も正式に王太子になったし」
「はい。おかげさまで。王太子になり、父上との共同名義の店舗で働けて幸せです」
ベリス王子はお父さんの事が大好きだから本当に嬉しそうだね。
「それにしても……オレとベリス王子が天族の血を引いていたなんてな」
イフリート王子が少し複雑な顔をしながら話しているけど……
確かに天族と魔族は遥か昔から仲が悪いからね。
と言っても、悪いのはこの『人間と魔族の世界』を植民地にしようとした天族なんだよ。
「そうですね。初めて知った時は驚きましたが……わたしは嬉しくもありました。おばあ様やおじい様は素晴らしいお方ですから」
おばあちゃんと吉田のおじいちゃんの事が大好きなベリス王子の気持ちが伝わってくる。
この言葉には嘘が無さそうだよ。




