ベリス王子との駆け引きはこれからも続きそうだね(5)
わたしがゴンザレスの母親?
(あ……いや……あの……変かもしれないけど……ごめんなさい。嫌ですよね。こんなの)
ゴンザレスが申し訳なさそうにしているけど……
嫌なんかじゃないよ。
えへへ。
むしろ嬉しいよ。
こんなにかわいい息子がいるなんて嬉しくなっちゃうよ。
(絶対に裏切らなくて……無償の愛を与えてくれて……ぺるみ様は皆の母親みたいです。オレだけじゃなくて魔族や人間の母親……)
それは違うよ。
わたしは……こんな言い方をしたら良くない事は分かっているけど……
人間と魔族だったら魔族の方が大切なの。
もちろん、ルゥのお兄様やおばあ様、ココちゃんやジャック達の事は大好きだけど……
わたしはルゥとして魔族の中で育ってきたから……
(そうですね。それは分かります。結局人間は魔族の食糧ですから。でも、それもこれから先変わっていくでしょう)
人間が魔族を虐げる未来がきそうで……ゴンザレスは怖いかな?
(正直、分からなくて。でも……アカデミーに通い始めてからは少しずつだけど変わってきました。人間を食糧としてではなく友として考えられるようになって……)
そうだね。
わたしもそうだよ。
……でも、わたしはジギタリス公爵達が処刑されても心が痛まなかったの。
だから、わたしは人間の母親にはなれないんだよ。
(ぺるみ様……)
結局わたしは偽善者なの。
こんなわたしがこの世界を見守ってもいいのかな……
(見守る?)
あ……
うん。
わたしは人間とは違って永遠に近く生きるでしょう?
だから、今頑張っているジャック達の子孫が幸せに暮らしていけるか見守りたいと思っているの。
(そうですね。天族である、ぺるみ様なら可能ですね。そして……オレにも……)
ゴンザレス?
(ベリアルもぺるみ様と同じ事を言っていました。この世界が傷つかないように頑張りたいと)
……そうみたいだね。
(オレも仲間に入れてもらえませんか?)
え?
ゴンザレスも?
(……ダメですか?)
そんな事はないよ。
すごく嬉しいよ。
(良かったです。実はベリアルが暴走しないか心配だったんです。ベリアルは純粋過ぎるくらい純粋だから)
あはは!
確かにそうだね。
ゴンザレスがベリアルを支えてくれたら安心だよ。
(ベリアルはオレを弟みたいだって言っていたけど、オレもベリアルが弟みたいにかわいいんです)
ふふ。
わたしから見たら二人ともすごくかわいいから、どっちが弟でも激かわだけどね。
(これからは我々で人間達を見守りましょう。ジャックやルゥ様の兄上達の子孫を見守るんです)
うん!
ゴンザレス……
ありがとう。
本当は人間が好きじゃなかったのに無理をさせてアカデミーにまで通わせて申し訳なくて。
でもゴンザレスがいてくれると心強いよ。
(えへへ。そう言ってもらえると嬉しいです)
「ぺるみ様、そろそろアカデミーに戻りましょうか」
ベリス王子が話しかけてきたね。
おばあちゃん達との話は終わったのかな?
「うん! ベリス王子……今日のテスト、正々堂々勝負だよ!」
ベリス王子よりも良い点数を取って、ベリアルのガラス細工をもらうんだ。
「ははは。それは楽しみです。わたしは勝負と名のつくものは負けたくない性分でして。本気でやらせてもらいますよ」
ついにテストが始まるね。
アカデミーに入学してからの一か月、この日の為にクラスの皆と勉強を頑張ってきたんだ。
わたしのクラスは、三クラスある普通科でテストの順位が毎回最下位だったらしいけど、今の学力なら、二位にはなれるはずだよ。
もう二度と『バカクラス』なんて言わせないんだから!




