こんなに分かりやすい犯人でいいの? ~前編~
「じいちゃん、お菓子うまかったぞ?」
さすがのベリアルも満腹みたいだね。
ご機嫌でかわいいな。
鳥だけど『そのう』じゃなくてお腹がパンパンになっているよ。
仰向けに寝っ転がって幸せそうな顔をしているね。
ベリアルの翼は飛ぶ時にも使えるけど、ある程度の大きさなら物も掴めるんだよね。
翼っていうよりは細長いパンみたいで思わず甘がみしたくなっちゃうよ。
あのパンみたいな翼でどうやって飛んでいるのか不思議だね。
「この変わったヒヨコちゃんは魔族ですか?」
公爵は魔族だと思っていたんだね。
「あぁ……アンジェリカちゃん達にはペットって言ってあったんだけど……実はわたしのペットじゃなくて、神様のペットなの。神様は聖女だった頃のわたしをベ……ヒヨコちゃんに守らせていたみたい」
あぁ……
平気で嘘を言える自分が怖いよ。
でもやっぱりボロが出るね。
いつもみたいにベリアルって呼んじゃいそうだった。
人間の前ではヒヨコちゃんって呼ぶ事になったんだよね。
今はヒヨコの姿だけど一応『ベリアル』は天族の名前だからね。
魔族みたいに従魔にはならないだろうけど、天族の名前は神聖なものだから。
それでわたしも神様の娘の名前の『ペルセポネ』じゃなくて、違う名前の『ペリドット』になったんだ。
ベリアルが口を滑らせて『ぺるみ』って呼んでもいいように似た名前にしたんだよね。
さっきまで小声でベリアルって呼んでいたのを聞かれていただろうけど、今からはきちんとやろう。
神様のペットなら信仰心の厚い人間達はベリアルを利用しないだろうってイフリート王に言われたんだよね。
確かに小娘のわたしのペットだったら誘拐されちゃうかもしれないからね。
お菓子をちらつかせれば簡単に拐えちゃうだろうし。
昨日は全種族王が集まっていたからお兄様を救う知恵をいっぱい授けてもらったんだよね。
ハデスは犯人の一族を暗殺すればいいだろうって言ったんだけど、さすがにそれはできないからね。
お兄様にも考えがあるみたいだし。
拐われた令嬢は毎回海に落とされているらしいんだけど、魚人族が手伝えなくなったから助けられなくなったんだよね。
でも、どうして犯人は毎回海に落とすのかな?
今、リコリス王国に残っている婚約者候補はあと五人。
お兄様は自分の娘を王妃にさせたい人間達がすり寄ってくるのが面倒で、公爵家と侯爵家の年頃の令嬢達を婚約者候補にしたんだよね。
もちろん強制ではなくて、他に婚約者がいる令嬢に候補から外して欲しいと言われて、候補から抜けた家門もあったらしいし。
ちなみに婚約者候補の中には赤ちゃんと、病気で家から出られない令嬢もいるらしい。
『年頃の令嬢』のはずだけど……
赤ちゃんを無理矢理候補にねじ込んでくる家門もあったのか。
すごいね。