ベリス王子との駆け引きはこれからも続きそうだね(2)
「あぁ……残念です。ガラスでできたベリアルはつぶらな瞳をキラキラ輝かせる為に特殊な加工をしていて……しかもツインテールなのですよ」
ベリス王子が明らかにわたしを挑発しているけど……
「ええ!? ツインテール!?」
ツインテール姿のベリアルのガラス細工!?
絶対欲しいよ!
興奮が止まらないっ!
「はい……まさかぺるみ様がベリアルのガラス細工を諦めるとは……残念です」
「……わたしの扱い方をよく分かっているね」
「ははは。なんの事やら」
「……うぅ。ベリアルのガラス細工……」
「あぁ……限定五個なので急がないと……」
「ええ!? 限定五個!?」
「はい。実は人間の四大国の王達から既に予約を……」
「えええ!? じゃあ、あとひとつだけしかないの!?」
「はい……困りましたねぇ。早く決断しないと最後のひとつも売れてしまいます……もう二度と手に入らない逸品ですよ?」
「うぅ……」
「あぁ、こうしているうちにも予約が……」
「買うっ! 買うよ!」
「買う……ですか? うーん。ハデス様に支払いを頼むのですか?」
「え? あ……そうか。わたしは人間のお金を持っていないから……それはダメだよ。推しのグッズは自分で稼いだお金で買わなくちゃ」
「これは困りましたねぇ。ですが、テストで全科目満点を取れば……」
「ちょっと待って……危うく騙されるところだったよ。わたしが全科目満点を取ったとしてベリス王子も満点を取ったら……わたしの勝ちじゃないよね?」
「おや? そうですか?」
「……ベリス王子はわたしが満点を取れないと思っているからこの賭けをさせようとしているんだね?」
「ははは。なんの事やら」
「もう! バレバレだよ!」
「ははは。なんの事やら。さあ、ベリアルのガラス細工……早くしないと売れてしまいますよ? 簡単です。ぺるみ様がテストで一問も間違えなければ良いだけです」
「うぅ……でも、それだとベリス王子が満点を取ったらわたしの勝ちにはならないし……」
「では、こうしましょう。わたしとぺるみ様が同じ点数ならば日頃お世話になっているお礼に無料でベリアルのガラス細工を贈らせていただきましょう」
「ええ!? いいの!?」
「はい。いつもお世話になっていますから」
「……なんか怪しいな」
「ははは。なんの事やら」
「裏があるね?」
「ははは。なんの事やら」
……本当に父親にそっくりだね。
「で? ベリス王子が勝ったらわたしに何をさせたいの?」
「あぁ……確かに先に話さないのは良くないですね。実は四大国に一つずつ、父上との共同名義の新たな店舗を始めたのですが……」
「ああ。そうだったね。その店舗が上手くいっていないの?」
「いえ。怖いほど順調です」
「……ん? じゃあ何の手伝いをさせたいの?」
「はい。実は……ぺるみ様とベリアルの等身大の像を造り、それを店舗に飾りたいのです」
「……え? どうして?」
「ぺるみ様は人間にとっても大切な存在です。しかしあと三週間でアカデミーを辞め、人間とは距離を置きます。人間達はその事に酷く悲しむでしょう。だからこそ神々しいお姿をいつでも見られるように像を飾りたいのです」
「……ベリス王と王子の店舗に?」
「はい!」
キラキラの瞳で返事をしたけど……
明らかに集客目的だよね。
「……断ったらどうなるの?」
「え? あぁ……そうですねぇ。ぺるみ様は、今回ガラス細工が手に入らず、ベリアルグッズが売り出されるたびにわたしから勝負を持ちかけられるでしょう。……お二人の像は欲しいですからねぇ」
「次々に売り出されるベリアルグッズ!?」
「はい。ですから今回勝負をしなくてもぺるみ様は今後も勝負をさせられるのですよ。像は欲しいですからねぇ」
ベリス王子がずっと『像が欲しい』と言っているよ……
これは像を造るまで言い続けそうだね。
「うぅ……次々に売り出されるベリアルグッズ……全部欲しいよぉ」
「さあ、どうしますか? 今回の勝負、受けますか?」
どうする?
どうするの?
わたし!




