ベリス王子との駆け引きはこれからも続きそうだね(1)
「うぅ……」
結局ベリス王にいいように使われそうだよ……
(ははは。ぺるみ様は相変わらずベリアルの事になると簡単ですね)
ゴンザレス!?
アカデミーに居たんじゃないの!?
(え? オレはぺるみ様の護衛ですよ? それに、ベリス王子を空間移動させるならオレかベリアルが一緒に居ないと話が合わなくなりますから)
……確かに。
空間移動は聖獣だからできるっていう設定なんだ。
ゴンザレスは冷静だね。
わたしはベリアルの特大ぬいぐるみが欲しくて冷静になれなくて。
(それだけベリアルの事が好きっていう事ですよ。そろそろアカデミーに戻らないとテストが始まりますよ?)
ああ!
そうだった!
「ベリス王子! テストが始まっちゃうよ!」
「え? もうそんな時間ですか。では、全ての科目で満点を取りに行きますか」
ベリス王子がいつも通りの作り笑顔で話しているけど……
全ての科目で満点!?
前から頭が良いとは思っていたけど……
「ベリス王子ってかなり頭が良いよね?」
「ははは。まあ、そうですねぇ」
謙遜しないんだね。
「そういえば幼い時に掛け算の本を全部覚えたって言っていたよね?」
「はい。まあ、数回読めば全て頭に入りますから」
この世界では掛け算ができれば天才なんだよ!?
「すごいね。本物の天才だよ」
「まあ、そうですねぇ」
やっぱり謙遜はしないんだね。
「よし! じゃあアカデミーに戻ろう。テストの平均点を上げないと。まあ、わたし達が居なくても最下位にはならないだろうけど」
「そうですね。彼らは頑張って勉強してきましたから」
「うん。ベリス王子も皆に勉強を教えてくれてありがとう」
「わたしにとっても、このアカデミーでの生活は有意義なものになりました。ぺるみ様には感謝しています。今までこれほど人間と深く関わった事はありませんでしたから。残りの三週間、素敵な思い出をたくさん作りましょう」
「そうだね。悔いのないように過ごさないとね」
「では、行きましょう。あ、そうだ。ぺるみ様、勝負しませんか?」
「ん? 勝負?」
「はい。クラスの順位とは別にわたしとぺるみ様の順位でも競争しませんか?」
「え? なんで……?」
「負けた方が勝った方の望みを一つ叶える……どうですか?」
「ええ!? 嫌だよ! って言うより普段からベリアルグッズを餌にしてわたしをいいように使っているよね!?」
「ははは。気のせいですよ。どうしますか? ちなみにですが、近々ベリアルのガラス細工が発売される予定です」
「ええ!? ガラス細工!? 絶対に手に入れないと!」
「いやぁ……それが数量限定でして……」
「ずるいよ! またそうやってベリアルで釣るんだから!」
「ははは。どうしますか? きっとすぐに売り切れてしまいますよ?」
「うぅ……テストでわたしが勝つって……ベリス王子は全科目満点を取るつもりなんだよね?」
「はい。ぺるみ様も全科目で満点を取れば良いだけの事ですよ。ははは」
「一問も間違えられないなんて……無理だよ」
「ぺるみ様なら絶対にできますよ」
「無理無理! 絶対無理だよ!」
「そうですか……ベリアルのガラス細工……残念です」
「……! ガラス細工! うぅ……ちなみにわたしが負けたらベリス王子は何をして欲しいの?」
「うーん……まだ考え中です」
この感じ……
絶対何かさせたい事があるね。
隣に居るベリス王も一瞬ニヤッとしたし。
「やっぱりやめるよ。悪い予感しかしないし」
「……そうですか? 分かりました。では、ベリアルのガラス細工は諦めるのですね?」
「それは……諦めたくはないけど……」
このままだといつも通り、ベリス王子の罠に嵌まりそうだよ。




