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アカデミーを辞めるまであと三週間か

 数日後……



「ん? ぺるぺるは今日も早起きだなぁ」


 吉田のおじいちゃんが第三地区の広場にあるキッチンから話しかけてきたけど……

 相変わらずおばあちゃんと仲良くしている。

 一緒に料理をしているのかな?


「おはよう。何を作っているの? 良い匂いだね」


「ははは。お花ちゃんと熊太郎が旨そうなさつまいもをくれたからなぁ。分厚い天ぷらを揚げてたんだ」


「分厚い天ぷら!? うわあぁ! 十センチはあるよ」


「なかなか時間がかかるからなぁ。お月ちゃんと仲良くしながら作ってるんだ」


「ふふ。楽しそうだね」


「ぺるぺるは今日からテストだったなぁ」


「うん。アカデミーに通い始めてもう一か月が経つんだね。早かったなぁ……」


「あと三週間で退学か。卒業までいてもいいんだぞ?」


「ありがとう。でも冥界の仕事もしたいし……やっぱり退学するよ」


「そうか、そうか。学校はどうだ?」


「楽しいよ。すごく楽しくてあっという間に一か月経っちゃったし」


「そりゃ良かったなぁ」


「おじいちゃんとおばあちゃんは今日もタルタロスに行くんだよね? あ、だから大量に天ぷらを揚げているんだね」


「ははは。コットス達への土産は百五十個必要だからなぁ。でもこの時間も楽しいんだ。喜んでもらえるか、旨いって言ってもらえるかって、子供達の事を考えながら料理をするのは幸せだなぁ。クロノスにはスイートポテトを作っていこうと思ってるんだ。甘いお菓子が好きだからなぁ」


「ふふ。そうだね」


「ほれ、ぺるみの分もあるからなぁ。熱いから気をつけろ」


 おばあちゃんが揚げたての天ぷらをくれたけど……

 確かに熱そうだね。

 

「あつ……あつ……うまああぁぁぁぁい!」


 ベリアルは一足先に食べていたんだね。

 山盛りの天ぷらで見えなかったよ。

 くうぅ!

 赤ちゃんみたいなスタイをしている。

 パンみたいな翼でフォークを握って……

 今日も超絶かわいいよっ!


「ぐふふ。熱々の天ぷらを食べるヒヨコちゃん……堪らないね」


「お前は朝から相変わらずの変態だな。テスト勉強はしたのか?」


 ぐふふ。

 毒舌のヒヨコちゃんも堪らないね。


「うん。寝る前も起きてからも、ちゃんと勉強したよ。それに毎日クラスの皆と勉強してきたからね」


 この世界では掛け算ができれば天才なんだよ。

 本当にありがたい世界だ。


「そうか。休日にも皆で集まって勉強したからな」


「うん。今まではクラス順位が毎回最下位だったらしいけど今回は二位を狙えるんじゃないかな?」


「そうだな。さすがに一か月勉強したくらいじゃココ達のクラスを抜かすのは無理だろうしな」


「えへへ。これでクラスの皆に自信がつけばいいんだけど」


「皆で一緒に頑張ってきたからな。これからはバカクラスなんて言われなくて済みそうだ」


「うん。これで、魔術科の平民の皆が『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』に出場できるように魔術の練習のお手伝いをする事に集中できるよ」


「出場できるのは五人だったな」


「うん。魔術科は来週出場者選抜試験らしいから……はぁ。わたしまで緊張しちゃうよ」


「最近魔術科は貴族からの嫌がらせが減ってるらしいな」


「そうだね。あの時……」


 あの貴族がお漏らしした事は秘密だったね。


「ん? どうかしたか?」


「あ、うん……いや、平民の皆が頑張っているから少しずつだけど認めてくれているんじゃないかな?」


「そうなのか? あの偉そうな奴が急に変わるとは思えないけどな」


「平民の皆は魔力を使えるようになってきたし、きっと三人の貴族に勝てるよね? でも、あの時いた貴族以外には会った事が無いんだよね」


「うーん……あの静電気ビリビリ貴族は人間にしては魔力が強かったからな。でも『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』は戦うっていうより派手な魔力を見せる大会なんだろ?」


「うん。だから、平民の皆には花を咲かせたり、色をつけた砂を風で舞わせたりする派手な演出を教えているの」


「平民の皆が選ばれても貴族は大丈夫なのか? 嫌がらせが酷くならないか?」


「アカデミーは身分制度は関係ないっていう方針だけど……『四大国のアカデミー魔術科対抗魔術戦』は魔塔に入る為の近道みたいだからね。嫌がらせはされるかもしれないけど、平民の皆は頑張りたいみたいだよ。マリーちゃんとジャックは卒業後は国に帰るから辞退するって言っていたけどね」


「魔術科は全部で九人でマリーとジャックが出なくて。それから……魔術戦には五人しか出られないから……えーと」


「出られないのは、あと二人だね。わたしの予想だとあの時いた以外の二人の貴族が出られないと思うんだけど……まだ会った事がないからよく分からないんだよ」


「確かに平民の皆は見た目が派手な魔術を上手く使いこなせるようになったよな」


「うん。毎日頑張っているからね」


「アカデミーに通うのもあと三週間か。ジャック達に会えなくなるのは寂しいけど……楽しい思い出をいっぱい作ろうな」


「えへへ。そうだね。よし! 今日はテストで良い点数を取ってクラス順位を上げるよ」


「そうだな。イフリート王子とベリス王子も結構頭が良いからな」


「グリフォン王は国に帰ったからね。わたしと王子二人で平均点をしっかり上げさせてもらうよ」


 グリフォン王は、浮遊島が予想よりも早く浮遊したからアカデミーを辞めて国に帰る事になったんだよね。

 わたしの神力が浮遊島に流れ込んだかららしいけど……

 天界の隠し部屋の光の方も一か月後くらいから色々と試してみる事になっているし。


 人間と深く関わるのもあと三週間。

 それから先は遠くから見守り続けるのか。

 この世界を見守る者としてずっとずっと永遠に……

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