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少しずつ前へ(4)

「そうなのね……わたしは、こう考えたの。ブラックドラゴンも、イナンナとホワイトドラゴンも元の形に戻ったらどうかって」


 バニラちゃんが真剣に話しているけど……

 良く分からないよ。


「元の形?」


「そうよ。例えば……新たに浮遊島を創って今度こそ誰にも邪魔されずに幸せに暮らすの。数千年前に叶わなかった幸せを手に入れるのよ」


「……でも、イナンナの身体に『イナンナの魂』と『ばあばの魂』が入ったらどうなるのかな? 今はイナンナの魂とばあばは別人として存在しているんだよね?」


「上手く融合するのは難しいはずよ? でも、ホワイトドラゴンの身体で融合するよりは上手くいく確率は上がるわ」


「元々、ばあばはイナンナの神力だったんだよね? 今のばあばの心が完全に消えちゃう可能性もあるんだよね? そんなのは悲しいよ」


「その事だけどなぁ……うーん」


 おばあちゃんが何かを考えながら話し始めたね。


「おばあちゃん? どうかしたの?」


「うーん……さっきぺるみが話してただろ? 神力が、イナンナの記憶をホワイトドラゴンに見せていたって……」


「……うん。ばあばはそう言っていたけど」


「本来、神力は感情を持たねぇんだ。少なくともばあちゃんはそう思っていた。それから、魂も身体に入らねぇと感情を持たねぇ。だから、ぺるみも群馬で魂としてさまよっていた頃の記憶はねぇだろ?」


「うん。何も覚えていないよ? ずっとお父様が守ってくれていた事も思い出せないし。でも、今群馬に居るイナンナの魂には感情があるんだって。悪い大天使がそうしたらしいよ?」


「うーん……そうか。神力に感情があるのも悪い大天使がしたんか? だとしたらぺるみが隠し部屋の光に懐かしさのような物を感じるのは変だよなぁ。ぺるみは、イナンナみてぇに悪い大天使に魂や神力をいじられてねぇからなぁ」


「そうだよね。わたしはその悪い大天使には会った事もないし」


「……うーん。もしかしたら……『身体』と『魂』と『神力』が存在している天族は、魂と神力にも感情が残っている……とか? イナンナやペルセポネは亡くなり方が他の天族とは違っていたからなぁ」


「イナンナの肉体は天界にあって魂は異世界に、神力はこの『人間と魔族の世界』に追放されたんだよね。わたしは肉体と神力がファルズフに隠されて魂はお母様の力で異世界に飛ばされた。わたしとイナンナは『肉体』と『神力』と『魂』が全て残っていたから……うーん。でもわたしには魂の頃の記憶は無いし……」


「イナンナの魂が肉体から出ても意識があるのは悪い大天使の力によるもんなんだろう? 神力に意思がある事には驚いたけど、もしかしたらそれも悪い大天使がやったんか? それとも気づかなかっただけで全ての神力に意思があったんか……?」


 全ての神力に意思がある……?

 じゃあ隠し部屋にある神力にも意思があるのかな?

 なんだろう。

 胸がザワザワする?

 わたしの中の『何か』が『何か』に気づいて欲しそうにしている?

 神力に感情があるのなら、隠し部屋の神力の光にも感情があるのかな?

 でも、悪い大天使はもう亡くなって……

 ……!

 そうか……

 そういう事だったんだ。

 悪い大天使はブラックドラゴンのおじいちゃんに自害させられた。

 だから、その神力は『隠し部屋の神力の光』に取り込まれた。


 やっぱりわたしの神力は、神力の光と繋がっているのかもしれない。

 群馬に居た頃のわたしの魂に記憶が無いのは、その頃はまだ悪い大天使が生きていて、その力が神力の光に取り込まれていなかったからなんだ。

 今のわたしは、天界の神力の光と繋がっているから、あの光に懐かしさを感じたのかも。

 その悪い大天使の『魂や神力に感情を持たせる力』をわたしも使えるようになったのかな?

 だとしたら……

 わたしならイナンナとばあばを上手く融合させられるかもしれない。

 あれ?

 じゃあ、オケアノスと融合できたのもその悪い大天使の神力がわたしの中に流れ込んできたからなのかな?


「ぺるみ……もしかしたら、その考えが正解なのかもしれねぇなぁ」


 おばあちゃんが、わたしの心の声を聞いていたみたいだ。

 吉田のおじいちゃんもバニラちゃんもゲイザー族長も聞いていたみたいだね。

 

 ……今はイナンナの事に集中しないと。

 

「……イナンナの神力が、天界に居た頃のイナンナやブラックドラゴンのおじいちゃんの姿をばあばに見せたっていう事は……神力はイナンナの身体に戻りたがっているのかな?」


「……そうかもしれねぇなぁ。でも、ホワイトドラゴンが消えるのは良くねぇなぁ」


「おばあちゃんもそう思ってくれるんだね」


「ホワイトドラゴンは優しい子だ。ルゥだったぺるみをずっと愛して守ってくれていたんだからなぁ」


「……うん」


「大好きなんだろ?」


「うん。わたしはばあばの事が大好きだよ。でもイナンナの事も大好きなの。天界に居た頃はイナンナだけがわたしの友達だったから」


「そうか、そうか」


「だから……どっちか一人が消えて一人が生き残るとしたら……すごく悲しいんだよ。ばあばだって本当は消えたくなんてないはずだから」


「だったら……やっぱりバニラちゃんの考えが一番良いのかもしれねぇなぁ。それに、今のぺるみなら魂の融合を手伝えるかもしれねぇし……まあ、一か八かでやっていい事じゃねぇからなぁ。しっかり準備してからじゃねぇと」


「……ばあばとイナンナとブラックドラゴンのおじいちゃんの三人で仲良く暮らす……なんて……やっぱり本人達には辛いよね。ばあばもイナンナもブラックドラゴンのおじいちゃんの事が好きだから自分以外と仲良くしている姿なんて見たくないだろうし。やっぱり、ばあばとイナンナが融合するしかないのかな?」


「だろうなぁ。でも融合は簡単じゃねぇんだ。……ホワイトドラゴンは覚悟を決めたんだろう? どれだけ辛いか……考えただけでばあちゃんまで苦しくなるなぁ」


「……自分が身を引く覚悟なんて絶対にダメだよ。わたしはそれをしてハデスを傷つけたの」


「ああ。ルゥだった時の事か」


「うん。だからわたしには、ばあばの辛い気持ちが分かるの」

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