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少しずつ前へ(1)

 ドラゴンの島から第三地区に戻るとおばあちゃんが帰ってきている。


 タルタロスでクロノスおじい様に会ってきたんだよね?

 会うのは、かなり久しぶりのはずだけど……

 クロノスおじい様は心の声が聞こえていたから、おばあちゃんが心配していた気持ちは伝わっていたらしいんだよね。


「おばあちゃん……」


「ああ。ぺるみか」


「……どうだった?」


「ああ。クロノスはお菓子を食べたらすぐにベットに入っちまった。でも……抱きしめたら、抱きしめ返してくれたんだ」


 おばあちゃんがすごく穏やかな顔をしている。


「……そう」


 安心したよ。


「側付きの二人にも、ちゃんと話してなぁ。赦される事じゃねぇけど……分かってはもらえたんだ」


「……うん」


「これからは毎日タルタロスに行くつもりだ。毎日入門申請書を出して……お菓子を作って……抱きしめてぇんだ」


「クロノスおじい様もきっと喜ぶよ」


「……これからは……クロノスやコットス達との時間を大切にしたくてなぁ。第三地区で暮らしながら昼間の数時間タルタロスに行くつもりだ」


「そう」


「ぺるみのおかげだなぁ」


「え?」


「数千年間なんともならなかった事が前に進んだ……不思議だなぁ。ぺるみの周りにいる皆が幸せになるんだ」


「そんな事はないよ。イナンナはわたしのせいであんな目に遭ったんだから」


「ペルセポネがファルズフに刺されていなくてもイナンナは追放されていたはずだ。あの頃の天界は荒れていたからなぁ」


「……ブラックドラゴンのおじいちゃんもばあばも同じ事を言ってくれたけど……やっぱりわたしは自分を赦せないんだよ」


「そうか……じゃあ……今のその気持ちを忘れるな。今の幸せが誰かの犠牲で成り立った事を忘れるな。こう言った方がぺるみの心は軽くなるんだろう?」


「おばあちゃん……」


「皆から優しい事を言われたら逆に辛くなるよなぁ」


「……うん」


「幸せにならねぇとなぁ。ぺるみが笑っていなけりゃイナンナ達に申し訳ねぇからなぁ」


「うん……ありがとう。おばあちゃんはいつもわたしの気持ちを分かってくれるんだね」


「群馬じゃ、ずっと二人で居たからなぁ。そういえば……ブラックドラゴンとは話したんか?」


「あ、うん。その事でおばあちゃんに聞いて欲しい話があって」


「ん? そうなんか? 晴太郎はれたろうに聞かれたらダメな話か?」


「ううん。できればバニラちゃんにも聞いて欲しいの」


「そうか。バニラちゃんならベリアルを寝かしつけてるはずだ」


「……あら? わたしに話があるの?」


 バニラちゃんがテコテコ歩いて来たね。

 フワフワの真っ白な毛に犬みたいな耳。

 キラキラでクリクリの黒い瞳がすごくかわいいけど疲れているのが見て分かる。

 パートナーを食べた『初めからいた者』になかなか会えないから疲れちゃったのかな?

 あ、でもこの話をするのならゲイザー族長にも聞いて欲しいけど……

 天界の光の話は聞かせない方がいいんだよね?


「ぺるみ……かなり大事な話みてぇだなぁ」


 吉田のおじいちゃんも歩いて来たね。

 ゲイザー族長も一緒だ。

 すごく仲良しに見える。

 ゲイザー族長は、ずっと甘えたかった吉田のおじいちゃんにやっと甘えられるようになったんだね。


「……うん。すごく大切な話なの」


「ゲイザー族長なら問題ねぇさ。あの洞窟に行って話を聞くとするか」


「吉田のおじいちゃん……うん。そうだね。聖女が眠っていたあの洞窟なら誰にも聞かれずに済むよね」



 こうしてわたし達は空間移動で洞窟の隠し部屋に来たんだけど……


 どの話からするべきかな?

 とりあえず、パートナーを食べた『初めからいた者』の話からでもいいかな?

 穏やかに世界を旅している話を聞いたらバニラちゃんもゲイザー族長も安心するはずだよ。

 それに……

 ばあばの話は一番最後にしたいんだ。

 

「え?」


 ゲイザー族長がわたしの心を聞いたみたいだね。

 吉田のおじいちゃんもおばあちゃんもバニラちゃんも聞いていたみたいだ。


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