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ドラゴンの島(3)

「どうしてドラゴン族は他種族と関わろうとしないの? あ、でもドラゴンの皆は第三地区に遊びに来てくれるよね? うーん?」


 ドラゴン族は、第三地区に居るおじいちゃんとおばあちゃん達が好きみたいだし。

 でも考えてみれば確かに第三地区と幸せの島以外でドラゴンを見た事は無いかも。

 いや、わたしを助ける為に人間の国に来てくれた事は何度かあったかな?


「そうね。ドラゴンは楽しい事が好きなのよ。でも、面倒な事が嫌いでね。この島から出るのでさえ正直面倒なのよ。ドラゴンってだけで怯えられるし、飛ぶのも面倒だし」


 ばあば……

 飛ぶのも面倒って……

 でも、確かにドラゴン族は皆そんな感じだよ。


「そうなんだね。第三地区の皆はドラゴンを怖がらないから遊びに来てくれるの?」


「第三地区は楽しいからかしらね」


「……あのさ。さっき『あの島に閉じこもっていた』って言っていたけど……それって『初めからいた者』の中の一人の事?」


「あら、知っていたの?」


「……うん。最近知ったの」


 でも、ばあばはどうしてその存在を知っているんだろう? 

 ばあばがドラゴンの赤ちゃんとしてこの世界に来たのは『パートナーさんを食べた初めからいた者』が閉じこもった後だよね?

 ドラゴンは耳が良いから色々聞こえてきたのかな?


「そう……ぺるみも色々と知らされたのね」


 そういえば……

 どうして閉じこもってい『た』なのかな?

 まさか……


「ばあば?」


「何かしら?」


「閉じこもっていたって……どうして過去形なの? まさか……亡くなったの?」


「え? 違うわよ? 生きているわ」


「じゃあ……どうして?」


「島から出たのよ」


「え? 島から出たの? でも、バニラちゃんは毎日会いに行っているみたいだけど」


「バニラちゃん? ああ。オケアノスの二つに分かれた魂の一つだったかしら。今は毛玉の姿になっているのよね?」


「うん。島から出て欲しくて毎日防御膜の外に行って話しかけているらしいの」


「あらあら。残念だったわね。もうあの島にはいないのよ?」


「じゃあ、どこで何をしているの?」


「人化して世界を旅しているわ。吟遊詩人としてね」


「吟遊詩人? どこかで聞いた話だね。どこだったかな?」


「嘘ばかりの吟遊詩人として有名らしいわ。でも、平民や地位の低い貴族はその嘘の話を聞くと息抜きになるらしくて。楽しい嘘で皆が笑顔になるらしいの」


「……やっぱりどこかで聞いたような……うーん?」


「バニラちゃんに教えてあげて。ずいぶん前にあの島から出て毎日穏やかに暮らしているとね」


「パートナーさんを食べてからずっと閉じこもっていたって聞いたけど……」


「シームルグよ」


「え? ピーちゃん?」


「遥か昔、シームルグが勇者としてあの魔族を討伐しに行ったの。なぜか防御膜の中に入れたらしいわね。でも、あまりに辛そうな姿を見て事情を尋ねて、そこでシームルグも異世界から連れてこられて勇者として何度も死んでいる話をしたらしくてね。それから色々あってあの魔族が人化して二人で世界を旅したらしいわ。その頃のシームルグは人間を信じられなくなっていたようね」


「そうだったんだね。ピーちゃんは何度も人間に裏切られていたらしいから。じゃあ、ずいぶん前に島から出ていたの? ピーちゃんが最後に勇者をしていたのは、かなり前のはずだし。それよりも前なんだよね?」


「そのようね。シームルグはその後あの魔族と別れて、その時の魔王を一人で倒したみたいね」


「でも島にはまだ防御膜が張ってあるって言っていたけど」


「『パートナーを食べた世界最強の魔族』……それを知っている魔族の目を欺く為よ。実際最強なのはドラゴン族だけど……ドラゴンは他の種族と関わらないから戦にも参加しないでしょう? 戦力として考えられていないのよね」


「利用されないようにまだ島にいると思わせたいのかな?」


「それもあるでしょうけど。世界を……あの魔族なりに守っているんでしょうね」


「世界を……守る?」


「ええ。あの魔族も『初めからいた者』だから……吟遊詩人として、酷い身分制度で苦しむ平民や地位の低い貴族に息抜きをさせているのよ」


「……そうなんだね。わたしも……この世界を見守るって決めたの」


「ふふ。そうなのね。ねぇ、ぺるみ?」


「ん?」


「幸せ?」


「……え?」


「ぺるみの夢は何?」


「夢?」


「近い未来でも遠い未来でも……」


「わたしの夢か……皆が笑顔で暮らせる世界……かな?」


「……ぺるみらしいわね」


「ばあば?」


 いつもと少し違う?

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