オケアノスの歌は誰にも止められないよね
「世界中で一番綺麗な花? うわあぁ! すごくかわいい花冠だ。ありがとう」
ベリアルがすごく喜んでいるね。
「ふふ。頭に乗せてもいいかしら?」
バニラちゃんも優しく微笑んでいるよ。
「もちろん! 麦わら帽子は取るから。えへへ。似合うかな?」
「とてもかわいいわ。ふふ。ベリアルは甘い香りがするわね」
「モモの中にアイスクリームが入ってるやつを食べたんだ! バニラちゃんの分もあるから。一緒に食べよう?」
あ……
バニラちゃんのしっぽがすごく揺れているね。
ベリアルの事が、かわいくて堪らないんだ。
「ありがとう。ベリアル。モモもかわいいけど、ベリアルはもっとかわいいわ」
「えへへ。恥ずかしいよ」
「あら、本当よ? 世界一かわいいベリアル。愛しているわ」
「……オレ……えへへ。生きてて良かった。バニラちゃん……ぺるみの中のオケアノスも……オレを創ってくれてありがとう」
ベリアルのつぶらな瞳が涙でいっぱいになっている。
(ペルセポネ。代わってくれ)
オケアノス?
うん。
もちろんだよ。
祝ってあげたいんだね。
(そうだ。オレのかわいいベリアルに贈り物をしたくてな)
うわあぁ!
素敵だね。
じゃあ、わたしは心の中で聞いているね。
どんな贈り物なのかな?
楽しみだなぁ。
「よし。ベリアル。オレからも贈り物があるぞ」
オケアノスが嬉しそうに話している。
大好きなベリアルの誕生日だからね。
「オケアノスか? うわあぁ! どんな贈り物かな? 楽しみだなぁ」
「ははは! オレからは歌の贈り物だ! よし! いくぞ!」
……!?
歌!?
ちょっと待って!
オケアノス!?
「うわあぁ! オケアノス! 今はダメだあぁぁぁ!」
ベリアルが必死に止めている声が聞こえてくるね。
「ははは! 遠慮は無用だ! いくぞ! ラララァァアアァァイ……ララアアァァアィィ」
始まっちゃったよ……
微妙に音が外れて気持ち悪くなる歌が……
「う……なんだ……」
「オケアノスの歌か? 耳がモヤモヤするぞ……」
「うぅ……耳が良い魔族の我らにはキツイ……」
「人間のオレらにもキツイぞ……」
無人島にいる皆が苦しそうにしている声が聞こえてきたね。
それでもオケアノスは気持ち良さそうに歌っているよ。
「ララアアァァアィ……さあ。どうだった?」
うわ……
嬉しそうに、ベリアルに感想を求めているよ。
「……良かった……よ」
……ベリアルは優しい子だよ。
他の皆は倒れたり座り込んだりしているね。
「ははは! 皆オレの歌に感動しているんだな。また、いつでも歌ってやるからな! ペルセポネ、代わるぞ」
……うん。
えっと……
お疲れ様。
「……ぺるみなのか?」
ベリアルが尋ねてきたね。
「……うん。わたしだよ」
「……聞いてたか?」
「聞いていたよ……ちなみにオケアノスはご機嫌でお昼寝を始めたよ」
「そうか。ぺるみからオケアノスにもう歌わなくていいって言ってくれよ……」
「わたしには無理だよ。かわいそうで言えないよ」
「オレだって言えないよ……」
「「はぁ……」」
わたしとベリアルのため息が重なったね。
「今のは……」
バニラちゃんがぐったりしながら絶望の表情になっている。
「バニラちゃん? どうかしたの? 大丈夫?」
「わたしって……あんなに歌が下手だったの?」
え?
ああ。
バニラちゃんとオケアノスは元々ひとつの魂だったからかな?
でも、バニラちゃんは子守唄が上手だよね?
「バニラちゃん大丈夫?」
「……だから遥か昔、子供達に子守唄を歌ったら複雑な顔をされたのね。自分では音痴は分からないものなのね……」
……え?
そんな事があったの?
オケアノスの子孫も大変だったんだね。




