毎回お出かけ前はこのくだりがあるよね
第三地区の広場にコットス達以外の全員が集まったね。
ついに無人島に出発だよ。
ああ、ウェルカムフルーツは喜んでもらえるかな?
ベリアルの誕生日の宴も楽しんでもらえるといいけど。
ん?
ハデスも魔王城から帰ってきたんだね。
さっきは逃げるように空間移動していたけど……
「持ち物は大丈夫か?」
「おやつは持ったか?」
「バナナはおやつに入るんか?」
でた!
このやり取り……
毎回ハデスはこれで第三地区の皆に遊ばれるんだよね。
「いや、だから前にも話したが、バナナとはバショウ科バショウ属の多年草だ。木になっているように見えるがあれは茎なのだ。つまりバナナは野菜に分類されるはず。おやつではないだろう?」
はい、始まった。
ハデスは真面目だから毎回真剣にこの話をするんだよ。
「よーし。出発だ。皆準備はいいか?」
「……!? いや、だからバナナの話は……? はぁ……一体何度話したら分かってもらえるのか。……では、わたしはコットス達を迎えに行ってくる」
ハデス……
なんだかかわいく見えてきたよ。
ブツブツ言いながら冥界に空間移動したね。
「ハデスちゃんは真面目だなぁ」
「からかうとさらにかわいいよなぁ」
「そうだよなぁ。あともう一回バナナのくだりをやりてぇなぁ」
「ははは! ハデスちゃんは何回も真面目にバナナの話をするからなぁ」
「やっぱり皆はハデスで遊んでいたんだね。第三地区の皆はハデスが怖くないの? 魔族にも天族にも恐れられているのに」
「ははは! 怖くなんてねぇさ。初めて会った時は魔族の姿で醤油を探しに来たんだ」
「そうだったなぁ。大切な人の為にって言ってなぁ」
「あの時の優しい顔を知ってるからなぁ」
「そうだなぁ。無理矢理醤油を奪う事もできたのにお礼にって言って魔法石を大量にくれたんだ」
「ルゥの為に醤油を探しに来てくれた時の話だよね?」
「そうだぞ。ずいぶん前の事のようだけどなぁ。まだそんなに経ってねぇんだなぁ」
「そうだなぁ。ハデスちゃんはあの頃からかわいかったなぁ」
「からかうとかわいいから、ついついバナナの話をしちまうんだ」
「そうだったんだね……」
あ、コットス達が着いたみたいだね。
「待たせたか?」
コットスの五十個ある頭がニコニコしながら尋ねてきたね。
綺麗な花を持っているけど、毎回きちんと手土産を持ってきてくれるんだ。
もしかして、ベリアルへのプレゼントかな?
ギュエースとブリアレオースは初めて来る第三地区に緊張しているみたいだね。
「大丈夫だよ。皆、今集まったところだから」
「そうか。それは良かった」
「ふふ。じゃあ皆行くよ! 今回はわたしが皆を空間移動するからね」
空間移動にも慣れてきたからね。
この人数なら安全に行けるはずだよ。
失敗して、空間移動する前とした後の場所で身体が裂けちゃったら大変だから慎重にしないと。
こうして『無人島への無料ご招待』が始まった。
ん?
何か大切な事を忘れているような気が……
あれ?
なんだっけ?
ああっ!
違うよ!
色々あり過ぎて忘れていたけど、これは無料なんかじゃないんだよ。
無人島使用料はタダだけどそれ以外は全部有料なんだ!
ウェルカムフルーツの桃だけで一体いくらになるの!?
しかも、夜はバーベキューだし。
待って?
朝食と昼食も無人島で食べるんだよね?
これはとんでもない額を請求されそうだよ。
一体いくら搾り取られるの!?




