最近ハデスは魔王城に逃げる事が多いよね
「そうだな。今日はいい天気だ! てるてる坊主のおかげか?」
雪あん姉の笑顔が朝日にキラキラ輝いている。
「……? 雪あん姉はてるてる坊主を作ったの?」
「ん? いや、向こうの木でベリアルが生け贄みてぇになってただろ」
「……! 見たんだね……」
証拠隠滅したと思っていたのに。
「助けてやろうと思ったんだけどなぁ。縄がほどけなくて。そしたらヘスティアがハデスじゃねぇと無理だって教えてくれたんだ」
「ヘスティアが?」
「ああ。今はもう帰ったぞ? 今日は天界で昼まで寝るって言ってたな。寝て起きたら、宴に来るって言ってたぞ」
ウェルカムフルーツのお手伝いで疲れたのかな?
朝が苦手なのに早起きで無理をさせちゃったのかも。
でも、どうしてわたし達が困っている事が分かったのかな?
寝ている時間だよね?
「昨夜は宴だと言っていたからな」
ん?
ハデスが話しかけてきたね。
「天界の宴?」
「ああ……ヘスティアは宴の華と呼ばれているのだ」
「華?」
「だから、宴終わりに水晶で第三地区を見て、手伝いに来たのだろう」
「そうだったんだね。天界の宴か。なんだかすごそうだね」
「……ペルセポネは参加してはならない」
「え? どうして?」
「あの宴は不健全だ」
「……? 不健全?」
「そうだ。とにかくヘスティアに妙な事を言われても言う通りにしてはならないぞ」
「そうなの? うーん……」
「……? どうかしたか?」
「あのね? ヘスティアにハデスの耳を甘噛みしろって言われたの」
「……!?」
ハデスが絶句しているね。
「ハデス? 大丈夫?」
「ああ……大丈夫だ。そうか……」
「甘噛みしたらダメなの? ハデスが喜ぶのかなって思っていたのに」
わたしはベリアルに甘噛みされたら嬉しいけど……
「……! いや、あの……そうだな。いや……」
あり得ないくらい慌てている?
どうしたのかな?
「ハデス?」
「ははは! ハデスは恥ずかしがってかわいいな!」
雪あん姉が笑っているね。
他の皆もニヤニヤしているよ。
「雪あん姉?」
「ははは! ぺるみもかわいいな!」
「何がおもしろいの? 教えてよぉ」
「ははは! それはハデスに教えてもらえ!」
「ハデス……教えてよぉ」
「ペルセポネ! いや、ここでは……その……あ! 魔王城に行かないと!」
ハデスがいきなり空間移動した!?
「ハデス!? まさか逃げたの?」
最近よく魔王城に逃げるよね。
何か話しにくい事でもあるのかな?
それにしても、第三地区の皆はすっかり空間移動の光に慣れたみたいだね。
眩しがらなくなったよ。
「さあ、皆で着替えて無人島に行く準備だ! ぺるみはベリアルを起こしてきてくれ」
雪あん姉が笑いながら話しかけてきたね。
孫を見守る優しいおばあさんみたいな瞳だよ。
「わたしがベリアルを起こすの? 任せてよ。ぐふふ。堪らないね。雪あん姉に頼まれたのならやるしかないよね。ぐふふ」
「……楽しそうだな。あり得ないくらいニヤニヤしてるぞ? じゃあベリアルは任せたからな。とりあえず、よだれを拭け?」
「嫌だなぁ。よだれなんて垂れていないよ。じゃあ行ってきます。ぐふふ」
さて、かわいいベリアルを起こしにいこうかな。
ぐふふ。
堪らないね。
一晩頑張ったご褒美として吸ってもいいよね。
ツインテールの間に顔をうずめちゃおうかな。
くうぅ!
興奮してきたよ!
あれ?
でもベリアルはさっきまで興奮状態だったよね?
今は落ち着いたのかな?




