ベリス王には怖いものがないのかな?
ベリス王は、この三十分でいくら稼いだの?
あり得ないくらいニヤニヤしているよ。
ん?
伝票を持って近づいてきたね。
恐怖の会計の時間だよ。
「ハデス様。今、計算してみたのですが……」
うわ……
聞きたくないよ。
金貨十万枚とか言われたりして……
「ああ。その事だがな。これからも父上達やペルセポネがいつでも買い物に来られるように先払いをしたいのだが」
ん?
ハデス?
それっていつ来てもタダで買い物できるっていう事?
「先払い……ですか?」
「ああ。わたし名義の金山がいくつかあるのだが。その中のひとつをベリス王名義にしようかと思ってな。まだ大量に金が眠っているのは確認済みだ。後日共に見に行き、好きな金山をひとつ……どうだ?」
「ええ!? よろしいのですか!?」
「これからも世話になるからな。今宵も無理をして深夜営業させてしまったし。それに父上達は深夜でないと『人間と魔族の世界』には来られないからな」
「確かに翼もありますし……ですが、人化すればいつでも来られるのではありませんか?」
「側付きの一人が日焼けを嫌っていてな。もう一人は昼間は決まった行動をしないと気が済まないのだ。父上は姿を見られる事を嫌がるし……だから、これからも深夜に買い物をする事になるはずだ」
「そうでしたか。なるほど。分かりました。ぜひその時にはベリアル達も連れてきてください。ぺるみ様を守る為に毎日アカデミーに行っているベリアル達にぜひチョコレートを『買って』あげてください」
……ん?
今のって何か変じゃない?
……!
さっきハデスは『クロノスおじい様達とわたし』の買い物した分を金山で前払いって言ったんだ。
ベリアルとゲイザー族が食べた分は別会計!?
どこまで商売上手なの!?
さすがのハデスも怒るんじゃない?
「それもそうだな。ベリアルとゲイザー族はいつもペルセポネを支えてくれているからな」
ハデスはまだ気づいていないんだね。
「では、ベリアルとゲイザー族が食べた分のチョコレートとホットチョコレート代が……えーと。はい。金貨一万枚です」
……!?
ベリス王には怖いものがないの!?
あのハデスを相手に何て事を!
って言うよりそんなに食べていたの!?
「……? 金山で前払いすると言ったはずだが?」
ああ……
ハデスが怒っちゃったかな?
暴れだしたらどうしよう。
「はて? 確かお父上達とぺるみ様の買い物分だったはずですが」
ベリス王!?
首を傾げて何を言っているの!?
ハデスは世界最恐って呼ばれた、前ヴォジャノーイ王なんだよ!?
「……確かにそう言ったか。ではベリアル達が食べた分と……チョコレートをあるだけもらおう。無人島への手土産にな」
ええ!?
すんなり受け入れた!?
あり得ないよ。
金山をあげたうえにチョコレート代を別に払うなんて。
「はい。かしこまりました。いやぁ……(たった三十分で一年分の売り上げを超えた……在庫処分までできたし。ふふふ。金山……金山)」
ベリス王は心の声が口から出ちゃっているね。
嬉し過ぎて理性が保てないんだ。
それにしても、ハデスはいつかベリス王に全財産持っていかれそうな勢いだね。




