クロノスおじい様の持つ力?
「深夜手当? それはそうだけど……ゲイザー族もベリアルもチョコレートをすごい勢いで食べているよ」
金額も心配だけど、チョコレートには興奮作用があるって聞いた事があるんだよね。
こんな夜遅くに大量に食べても大丈夫なのかな?
「ははは。夏は暑くてチョコレートの品質を保つのが大変なのですよ。今までの在庫処分……ああ、いや、ベリアル達に喜んで欲しくて」
ベリス王が慌てて言い直した?
「……今、在庫処分って言ったね」
「ははは。気のせいですよ。ささ、ハデス様のお父上、こちらの生チョコレートもどうぞ」
ごまかしたね……
ん?
クロノスおじい様は掛け物の隙間からまた手だけ出しているね。
どうして姿を見せたがらないんだろう?
これは、だらけているっていうより人見知りとかそういう感じなのかな。
「何これ……んまぁ……」
掛け物の中から嬉しそうな声が聞こえてきたね。
「ははは。それは、生チョコレートですよ? それと本日は特別にクリームブリュレも用意しました。ささ、どうぞ」
「クリーム……? ……! んまあぁぁい!」
喜び過ぎてクロノスおじい様の掛け物が取れたね。
「これは……」
ベリス王がクロノスおじい様の美し過ぎる容姿に驚いているよ。
「クリーム……好き……」
夢中でクリームブリュレを食べているね。
「……あの。もしかして……魅了の力をお持ちでは?」
魅了の力?
クロノスおじい様が?
だから魅了しないようにずっと隠れているのかな?
「クリーム……好き……ああ。もうない……」
食べ終わっちゃったんだ。
慌ててまた掛け物にくるまったね。
「ベリス王? クロノスおじい様には魅了の力があるの?」
「ああ。はい。そのようですね。以前聖女様に魅了された時と同じ感情になりましたから。ですが、それよりも遥かに強い魅了の力のようです」
「それでずっと隠れて、魅了しないようにしているのかな」
「……? 直接尋ねてみないのですか?」
「ああ。上手く会話が……その……」
何て言ったらいいんだろう。
「なるほど。そうでしたか」
さすがベリス王だね。
わたしの言いたい事が分かったんだ。
「ホワイトチョコレートももらえるかな? 楽しみにしていたみたいなの」
「はい。もちろんです。ささ、このホワイトチョコレートはこの夏の新商品なのです。溶けやすいので一口でどうぞ」
クロノスおじい様は、また掛け物から手だけ出しているね。
「……! んまい! もっと!」
「ははは。はい。では一箱どうぞ」
「んまい! んまい!」
クロノスおじい様のご機嫌な声が聞こえてくるね。
「父上はチョコレートが気に入ったようだな」
ハデスが優しく微笑みながら話しかけてきたね。
側付き二人の買い物は終わったのかな?
おお……
山積みのラッピングされた品物があるね。
ん?
ベリアル達はまだ食べていたの?
ああ……
チョコレートの空箱がさらに増えているよ。




