欲しい物があると外に出るのも億劫じゃないよね
「そっか。じゃあ、後でお土産を持ってくるからね」
やっぱりクロノスおじい様も側付きの二人も行きたくないか。
「ペルセポネ様……」
側付きの一人が話しかけてきたね。
確かナルシストなんだっけ?
「ん? やっぱり行く?」
「いえ。あの……鏡を……」
「鏡?」
「はい。新しい物が欲しいかな……と」
「え?」
今持っている物も素敵な手鏡だけど。
「それなら! それならオレも新しい書物が欲しい!」
「……あ、そうなんだね」
確かこっちの側付きは勉強が好きなんだっけ。
勉強をきちんとする為に毎日規則正しく暮らしているんだよね。
「ウラノス様から聞いたのですが魔族が立派な店舗を経営しているそうですね。それは美しくなれる化粧品を取り扱っているとか」
「だったらオレも『人間と魔族の世界』の書物が欲しい!」
この二人……
美容と勉強への欲がすごいね。
でも、これってもしかしたらタルタロスから出るチャンスかも。
「……だったら一緒に行こうよ」
さりげなく誘ったら上手くいくかも。
「え? でも日に当たりたくないし……」
「オレは日々の暮らしを変えたくないし」
やっぱり、そうきたか。
でも引き下がらないよ。
「鏡も書物もいっぱいあり過ぎてわたしには選べないし。あのね? 前に店舗に行ったらすごかったの! 生演奏を聴きながらチョコレートの匂いがする店内で買い物ができるんだよ。ベリス王に頼めばかなり上質な鏡と、普通は手に入らないような書物も用意してくれるはずだよ。全身が映る鏡とか、難しい数学の書物とか? 天族の数学者が愛読している人間の書物もあるんじゃないかな」
「……チョコレートの香り?」
ん?
クロノスおじい様がベットの中で呟いたね。
「生演奏の中で買い物ができるのですか……それは美しい。しかも全身が映る鏡とは……最高です」
美しい?
生演奏の中で買い物をしている自分が?
やっぱり自分が大好きなんだね。
「入手困難な書物……欲しい」
完全に食いついたね。
でも、ベリス王の店舗で買うとかなり高そうだよ。
お金……どうしよう。
「ペルセポネ、そろそろ行かないとモモの準備が間に合わないぞ」
ハデスが呼びに来てくれたね。
相談してみようかな。
わたしがベリス王と新しい商売をしてその対価で品物をもらってもいいけどハデスからしてみれば大切な父親の側付きだからね。
自分が支払いたいはずだよ。
「ハデス、あのね? クロノスおじい様の側付きの二人が鏡と書物を欲しいらしくて。だからベリス王のリコリス王国の店舗に来てもらいたいなって思ったの。でもあのお店は全部高額だから……」
「そうか。それならわたしが支払うから安心しろ。父上がいつも世話になっているからな。好きな物を好きなだけ買えばいい」
さすがハデスだよ。
「かう? とはなんだ?」
側付きの一人が尋ねてきたね。
「買うとは……そうだな。金貨銀貨銅貨という物があり、品物を持つ者に渡すのだ。すると品物が手に入る。品物により価格は変わるが……まあ、金貨があれば大体の物が買えるだろう」
「へぇ。それはおもしろい。魔族の店舗か……」
「化粧品の取り扱いは毎日ありますか? 最近タルタロスが明るくなって肌が乾燥して……」
お?
側付きの二人はベリス王の店舗に興味があるみたいだね。
「もうタルタロスは罪人の牢獄ではなくなったから神力の光を多くしたのだ。その為に乾燥したのだろう。人間の王族もベリス王の店舗の品物を使っているくらいだ。かなり質の良い品物があるだろうな」
なるほど。
だからタルタロスが明るくなったんだね。




