ベリス王子がタダで何かをしてくれるはずがないよ
こうして普通科のクラスルームに戻ると……
「うわあぁ! やめろぉぉぉ! 誰か助けてくれぇ!」
ん?
ベリアルの叫び声?
「あ、ペリドット様。ちょうど良いところに」
前の席のジャックがニヤニヤしながら話しかけてきた。
クラスの皆が集まっていてベリアルの姿が見えないよ。
「どうかしたの……って……え!?」
ベリアルが黄色いフワフワなドレスを着ている!?
超絶かわいいっ!
「ぐふふ。ヒヨコ様の為に作ったのです。あぁ……わたくしの頭の中のヒヨコ様が現実世界に飛び出してきたようです。くうぅ! 堪りませんっ!」
先生が大興奮しているよ。
完全なる、ど変態だね。
「うぅ……寝ている間にいつの間にか着させられてたんだ。どこに行ってたんだよ! バカぺるみっ!」
「学術科に行っていたの。なかなか個性的な男の子が四人いてね。王子がかっこよくしてあげたの。そうだよ! これって商売にできそうだよね」
「商売にですか?」
ベリス王子が尋ねてきたね。
「うん。身体をセッケンで磨きあげて化粧水とかを使って、髪型とか眉とかを綺麗に整えて。服も靴も選んであげるの。それで気に入ったら化粧水とか服を買ってもらえば……固定客になって稼ぎ放題だよっ! って、あれ? わたしまで商売人みたいになっちゃった」
いつの間にかベリス王子みたいな事を言っているよ。
自分が怖い……
「ははは。ぺるみ様には商売の才能があるようですね」
「どんどん王子みたいになっていく……」
「ははは。ようこそ。こちら側へ」
「あまりそっち側には行きたくないよ……」
「ははは。ところで本日の講義は終了したようですね」
「え? もうそんな時間?」
確かに学術科では色々あったからね。
「明日はアカデミーも休校日ですし、久々に婚約者様とデートでもいかがですか? この前のお礼に素敵な貸し切り無人島を用意してありまして」
「え? ……もちろんタダじゃないよね?」
「ははは。ご冗談を。もちろん無料でご招待しますよ」
「……嘘だよね」
信用できないよ。
今までそれで何回も騙されているからね。
「ははは。信用されていないのですね。妹に誓って無料でご招待しますよ」
「妹さんに誓って? ……じゃあ本当かな?」
ベリス王子は妹さんを溺愛しているからね。
「もちろんです。というわけで明日はお二人で楽しんでください。ウェルカムフルーツはモモにでもしましょうか」
でた!
タダの桃!
第三地区で取り放題だからね。
「うわあぁ! 素敵です! 楽しんできてくださいね」
ジャック達が羨ましそうにしているけど……
嫌な予感しかしないよ。
絶対何か高額な物を買わされるやつだよ。
それに、二人きりなんて無理じゃないかな?
うさちゃんはハデスと仲良くさせない為に付いてくるだろうし、第三地区の皆がそんなおもしろそうな所に付いてこないはずがないよ。
とりあえず、今から魔術科に行ってその後に市場に行かないと。
あぁ……
第三地区に帰ったら無人島に行く準備を皆で楽しそうに始めているんだろうな。
明日はどうなるんだろう。




