学術科の男の子は独特な雰囲気だね(5)
おお!
四人の男の子が、なかなか爽やかになっているよ。
「うわあぁ! 素敵だよ。良い匂いだし。うん! これなら女の子から声をかけられても普通に返事ができるね」
「ははは。その通りですよ。まずはわたしの父の店舗で取り扱っているこの化粧水と髪と身体を洗う用のセッケン、それからプルプルの唇を作るリップを購入しましょう。それが美への近道です」
……ベリス王子。
今度はしっかりお金を取るんだね。
「プルプルの唇?」
「化粧水とは?」
「さっきも使ったが……髪を洗う用のセッケン? そんなのは初めて見た」
「身体を洗うセッケンとは違うのか?」
「はい。まず、プルプルの唇は麗しい女性の唇を傷つけない為です。皆さん……口づけをする時を想像しましょう。ザラザラの唇で愛しい女性を傷つけたら? そうならないように常日頃から唇をケアする必要があるのです。それから、化粧水は肌のベトつきを抑えてくれますし……先程使った髪用のセッケンはいかがでしたか?」
「唇……ザラザラ……ダメ……」
「口づけ……」
「女人……唇……」
「麗しい女性……」
ダメだね。
髪用のセッケンの話なんか全然聞いていないよ。
「(ふふふ。大成功ですね)」
ベリス王子がニコニコしながら呟いたね。
これは完全にロックオンされたよ。
「皆さん。わたしと共に美しくなりましょう。これからは男性も美を求める時代なのです」
「「「「はいっ!」」」」
完全にベリス王子にやられたね。
お年頃の男の子の心を鷲掴みだよ。
「(いやぁ……これは、がっぽり稼げそうですね。伯爵家二人と侯爵家二人……さて、いくら引き出せるか)」
ベリス王子がニコニコとニヤニヤの間の笑みを浮かべているよ。
お姉さんの事が落ち着いてもう商売をしなくてもよくなったはずなのに、まだまだ稼ぐつもりだね。
それにしても……
この男の子達は美に目覚めて勉強をしなくなったりしないよね?
学術科だから勉強をしないといけないんじゃ……?
大丈夫かな?
「さて、まずは手鏡を買いましょう。はい、一つ金貨一枚です」
ベリス王子!?
金貨一枚は十万円だよ!?
「おお。これは質の良い鏡だ」
「これがわたし……? 美しい」
「ずっと見ていたい」
「女人……口づけ……」
女人君は口づけで頭がいっぱいみたいだね。
金貨一枚の手鏡を皆普通に買ったよ。
さすが伯爵家と侯爵家だ。
「鏡は常に持ち歩くのです。特に前髪は命ですよ?」
「前髪……命……」
「前髪……命……」
「前髪……命……」
「女人……口づけ……」
男の子達はすっかりベリス王子に洗脳されたね。
「それから勉強は今までのように続けてはいけません。適度な睡眠。そして昼寝も大切です。ちなみに美意識の高い者は睡眠にかなり気を遣うのですよ? 上質な眠りが欲しければ後でベットと枕を用意しましょう。ベットは金貨十枚。枕は金貨五枚です。それから食事はバランス良く朝昼晩毎食きちんと摂りましょう。野菜、フルーツは絶対に毎食一品以上入れましょう。肌が美しくなりますよ?」
恐ろしい……
これが詐欺師のやり方なの?
さりげない会話の中でしっかりベットと枕を買わせようとしているよ。




