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学術科の男の子は独特な雰囲気だね(2)

(ぺるみ、お待たせ。他の建物は涼しくしてきたわよ。あとは、ここだけね)


 氷の上位精霊のフラウが心に話しかけてきた。


 ありがとう。

 助かるよ。


(皆、突然涼しくなったから驚いていたわ)


 フラウのおかげだよ。

 本当にありがとう。


(あらあら。この人間達はこんな環境でよく勉強していられるわね)


 うん。

 暑過ぎてほとんど頭に入らないだろうね。


(今にも倒れそうなくらい疲れきっているわね。……はい。魔法石に氷の力を入れたわ。すぐに涼しくなるはずよ?)


 ありがとう。

 あぁ……

 涼しい……

 

(ふふ。気持ち良さそうね)


 うん!

 最高だよ。


「あ……涼しくなった? よし、さらに集中できるぞ。これなら今までの三倍は集中できる。集中……集中だ。掛け算を覚えなくては……いちかけるいちはいち……」

「もう夏も終わりか……ブツブツ……」

「いや、まだ夏は終わらないだろう。夏の長期休みまでまだひと月以上あるんだ。君はそんな事も分からないのか」

「君と話をしている暇はない……次のテストで一番になる為に一秒も無駄にはできないからな。ブツブツ……まあ、君は足し算を指を使ってしていればいい。足も使ってすればいい」

「愚かな……それでは二十までしか計算できないだろう」


 ……思った以上に学術科の貴族は癖が強そうだね。

 しかもレベルが低過ぎる……

 子供のケンカみたいだよ。

 この人間達を相手に健康の話をしても聞いてもらえないだろうな……


「ペリドット様……あの……こんな感じだから話を聞いてもらえなくて」


 女の子の一人が申し訳なさそうに話しかけてきたね。


「二人も大変だね……」


「差別をされないだけでもありがたいです。でも貴族の皆さんが身体を壊しそうで心配で……」

 

「確かにそうだね。いきなり涼しくなったから着替えないと風邪をひいちゃうよ」

 

「あぁ。そうですね。皆さん! 着替えませんか? このままだと風邪を……あの……皆さん?」


 ダメだね。

 平民の女の子が話しかけても全然聞こえていないみたいだよ。

 ん?

 でも、男の子達がちょっと嬉しそうな顔をしたように見えたけど。


「こうなったら仕方ないね……はーい! 注目っ! 頭が良くなりたかったらわたしの話を聞いてね!」


 これでどうだ!


「……頭が良くなる? (うわ……かわいい。無理)」

「話を聞けば頭が良くなるのか? (かわっ……眩しい)」

「そんな事があるはずがない。答えは常に教科書の中にある! (んん!? かわいい女人……)」

「ブツブツ……いちかけるさんはさん……(キラキラ……直視したら死ぬ。直視したら死ぬ)」


 おお!

 初めて反応があったよ。

 何かブツブツ言っているけど良く聞こえないね。


「わたしは掛け算が全部言えるよ」


 この世界では掛け算ができたら天才なんだよ。

 本当にありがたい世界だ。


「まさか……」

「あり得ない……」

「天才……降臨!?」

「いや、信じられない。そらんじてみよ」


 ん?

 そらんじてみよって?


「えっと……とにかく、身体が冷えたら風邪をひいて勉強する時間が減っちゃうから着替えてきて? それと……少し……いや、かなり臭うよ? お風呂には入っているの?」


 まさか、時間がもったいないからってお風呂に入っていなかったりして……

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