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背後からハデスの視線を感じながらリコリス王国を歩く

「まさか人間の国にまた来るなんてな」


 わたしに抱っこされているベリアルが呟く。


「うん。まさかこの一週間でこんなにも状況が悪くなっていたなんて」


 わたし達は今、ルゥのお兄様の国のリコリスに来ている。

 お兄様は若くしてこの大国の王になった。

 海賊の魚人族の話によれば、お兄様の婚約者候補が次々に消えているらしい。

 確か、わたしがアンジェリカちゃんに初めて会った時も誰かに拐われそうになっていたよね?

 同じ犯人か……

 というより犯人はバカだよね?

 最後に残った令嬢が犯人の身内っていう事でしょ?

 自分達が犯人だって言っているようなものだよね?

 ちなみに数人拐われて海に落とされたらしいけど、海賊の魚人族が助けて海賊の島で保護しているから今のところ死者はいないらしい。

 いきなり拐われて海に落とされた上に魔族に連れて行かれて、そこにココちゃんのおばあさんがいるんだよね……

 令嬢達は無事なのかな?

 あ、でもお兄様の『海賊のお父さん』のお菓子は最高においしいから皆喜んでいたりして……

 まさか、ココちゃんのおばあさんに鍛えられてムキムキになっている、なんて事は無いよね?

 貴族の令嬢は皆細くて色白で心配になっちゃうんだよね。

 海賊の島では貴族だからってわがままなんて絶対に許されないだろうし、今頃大変だろうね。

 ベリス王の話だとココちゃんのおばあさんには少しだけ神力があったんだよね?

 同じ血を引いているから姪であるルゥの母親が聖女ルゥを産んだのかな?

 うーん。


「ぼーっとするなよ? アンジェリカの邸宅に行くんだろ?」


 ベリアルの言う通りだね。

 

「えへへ。旨いお菓子はあるかな?」


 ご機嫌でかわいいね。

 ふふふ。

 今日もベリアルのつむじはご健在だね。

 くうぅ!

 堪らないよ!


 ちなみに、今はベリアルを抱っこして一人で歩いているけど、少し離れた所に翼を隠したハデスと人化したヴォジャノーイ族のおじちゃん達が付いてきている。

 ハデスはわたしと二人で来たかったみたいだけど、もし人間がわたしに何かしたら怒り狂って暴れだすのは分かりきっているからね。

 第三地区に留守番して欲しいってお願いしたら、それはできないからって少し離れて付いてくる事になったんだ。

 ベリアルは空間移動と護衛をするっていう約束でリコリス王国に来ているんだよね。

 市場でお菓子を買うって言ったらすごく喜んで『早く早く』ってかわいかったな。

 ハデスはベリアルを『息子』って呼び始めてから以前みたいに嫉妬しなくなった。

 今回もわたしにぴったりくっついて離れるなって言っていたくらいだし。


 あぁ……

 背後からハデスの心配する視線を感じるよ。

 少しでも人間にぶつかれば、その人間の命は無いからね。

 瞬殺……いや、じわじわとなぶり殺……

 考えるのは、やめよう。

 ハデスは冥王で皆から怖がられているけど、わたしにだけは甘いからね。

 今は、人間の死体がゴロゴロ転がらないようにわたしがしっかりしないと!


「おい。ぺるみ、気をつけろよ? ハデスの視線が痛いぞ? 人間の命はお前にかかっている」


 ベリアルの言う通りだよ。

 他の皆は第三地区で水晶を使って今の様子を見ている。

 昨日のお父さんの誕生日の宴に来ていた魔族達も心配して(ドラゴン達はおもしろがって)第三地区に来てくれているみたい。

 何かあれば空間移動ですぐに助けに来るからってお父様が泣いていたね。

 そういえばいつも付いて来たがる吉田のおじいちゃんが静かだったね。

 第三地区にいなかったのかな?

 リコリス王国で悪さをしている人間も、まさか魔族と天族に目をつけられているなんて考えもしないだろうね。

 それに、さっきからイフリート王とベリス王の気配を感じるんだけど?

 来る予定は無かったよね?

 あぁ……

 穏便に済ませたいけど無理そうな予感がするよ。

 

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