学術科の男の子は優しい貴族なのかな?
「さて、雪ヒヨコちゃんも作り終わったし……えっと……あなた達の建物もすぐに涼しくなるだろうけど……」
アカデミーには魔術科、神官科、騎士科、学術科、普通科があるんだよね?
それぞれが一棟ずつ建物を使っているとは聞いているけど。
普通科と魔術科以外の人間と関わるのは初めてかも。
貴族と王族しか普通科には入れないんだよね。
普通科以外には平民もいるらしいけど、まだまだ貴族の方が多いらしい。
「ありがとうございます。わたし達二人は学術科なんです。平民なんですけど……」
学術科の女の子か……
わたしに建物を冷やさせるように貴族から頼まれたのかな?
「建物内は、かなり暑いのかな?」
「はい。でも、貴族の皆さんはなんていうか……暑くても我慢しているっていうか」
「ん? 我慢?」
「はい……学術科の建物は黒いからかなり暑くて」
「黒か……それは暑そうだね。普通科は白っぽいからまだ良かったんだね。でも我慢って?」
「あの……美学? うーん……少し変わっているっていうか」
「美学? 変わっている?」
「わたし達平民には分からない何かがあるみたいです」
「暑いなら暑いって言えばいいのにね」
「暑いって言ったら負けみたいな……」
「え? あはは! 負けず嫌いなのかな」
「貴族の皆さんは、そうみたいです」
「二人も大変だね。貴族から嫌がらせはされていないかな?」
「学術科はそれほど差別がなくて」
「へえ。意外だね。頭が良いから嫌がらせが酷いかと思っていたよ」
「うーん……身分というよりは自分が一番になる為に日々努力する方々だから……」
「身分より成績っていう事かな?」
「はい。平民だからってバカにされる事はほぼないです。成績で上位になっても平民のくせにとかも言われないし」
「それってすごい事だね」
「はい。魔術科のマリーちゃんは友達で……魔術科の貴族に嫌がらせをされているって聞いて驚きました。学術科の貴族の皆さんは変わり者……いや、あの……個性的だけど皆さん勉強に夢中で嫌がらせはしませんから。その時間があるなら勉強に使いたい……みたいな感じで」
「あはは! かなり言葉を選んでいるね。なるほど。じゃあ皆は身分制度であまり辛い思いをしていないっていう事なんだね」
「はい。だから……汗をかきながら必死に勉強している貴族の皆さんの為に涼しくならないかと思って。暑がる時間も無駄にしたくないような方々だから。それでマリーちゃんに話してみたらペリドット様ならなんとかしてくれるんじゃないかって」
「貴族の皆の為にわたしの所に来たんだね」
「涼しくするお願いをしたうえにアイスクリームまで食べさせてもらえて。すごくおいしかったです」
「まだアイスクリームは残っているかな?」
「え? あ、はい。少しだけなら。皆さん寒くて温かい物を食べていたから」
「じゃあ、学術科の皆に持って行ってあげようよ。身分差別をしない貴族なんて素敵だから甘い物を食べて疲れを癒して欲しいよ」
話を聞く限り優しくて勤勉な人間みたいだし。




