アメリアとペルセポネ~前編~
「守られるだけの存在にはなりたくないの。わたしは大切な誰かを守れる存在になりたいの」
まだルゥだった頃に『じいじ』の隣に立てるようにって頑張っていた事を思い出すよ……
懐かしいな。
そんなに時間は経っていないのに。
「……ペリドット様らしいですね。わたしも……剣術を習ってみたくなりました」
アメリアちゃんが?
「あはは。宰相が驚いちゃうんじゃない?」
「彼ならきっと笑ってこう言うはずです」
「うん?」
「悔いのないようにやってみたらいい……と」
「貴族令嬢が剣術を習う事を良く思わない貴族もいるんじゃない?」
「……確かにそうかもしれませんが。やってみたいのです。何か一つでも取り柄が欲しくて」
「取り柄?」
「宰相の婚約者ではありますが……それは、まだ彼が領地にいた頃に決められた事で。宰相になった彼には伯爵令嬢では釣り合わなくて。だから……」
「アメリアちゃんは今のままがいいな」
「……え?」
「わたしは今のままのアメリアちゃんが好きだよ」
「今のままのわたし?」
「スウィートちゃんに毎日会いに行っているんだってね。スウィートちゃんから聞いたよ? すごく嬉しそうだったの。それってなかなかできない事だよ」
「……なかなかできない事?」
「うん。それにジャック先生のクラスのティーパーティーに誘われた時も怯まなかったでしょう? すごい勇気だよ。クラスの皆もアメリアちゃんを信頼しているんだよ。アメリアちゃんは宰相とお兄様が進める政策を知っているんだよね?」
「あ……はい。身分制度の廃止とまではいかなくても、人が人らしく生きられる国にしたいと……」
「アメリアちゃんは伯爵令嬢だけど、男爵家の学生にも平民の皆にも優しいでしょう? それって他の貴族だとなかなか難しいんじゃないかな。だからわたしはずっと思っていたの。さすが宰相が好きになった人間だなって」
「それは……親が決めた婚約で」
「でも、宰相はヒヨコちゃんに似た赤ちゃんが欲しいって言ったんでしょう?」
「あか……! はい……」
アメリアちゃんが恥ずかしそうにしているね。
「(ねぇねぇ……赤ちゃんの作り方って知っているかな?)」
「ええ!? あ……あの……はい……」
「(わたし……昨夜それを知って……知恵熱を出したの)」
「ええ!?」
「ここだけの話だよ? 誰にも言ったらダメだよ? 今朝もヒヨコちゃんに、アカデミーで誰かに話したらヒヨコちゃんの秘密も話すからって言って口止めしたの」
「……ぷっ。あ、すみません。想像したらおもしろくて……」
アメリアちゃんが吹き出したね……
まあ、呆れられても仕方ないよね。
「アメリアちゃんはもう……宰相と……」
「まさかっ! (まだ口づけだけですよ)」
「わたしもだよ。(まだ口づけだけなの)」
「「ぷっ! あはは!」」
「わたしは絵で勉強したんだけど衝撃だったよ」
「わたしもです。頭がクラクラしましたよ」
「……アメリアちゃんだから話したんだよ?」
「……え?」
アメリアちゃんが不思議そうに首を傾げている。




