暑いと勉強に集中できないよね
木陰でいつも通りにクラスの皆とお昼ご飯を食べる。
日に日に暑くなってきているね。
今日でアカデミーに通い始めて十一日目か。
あっという間だったよ。
「ぺるみ。ほら、こっちのキッシュ食べてみろ! すごいぞ!」
ベリアルは、つぶらな瞳をキラキラ輝かせているね。
ぐふふ。
かわいい。
「うわぁ。本当においしそうだね。それって吉田のおじいちゃんが作ったんじゃないかな?」
「え? じいちゃんが? モグモグ」
「うん。ずっと前に作ってくれたの。おばあちゃんの誕生日に甘くないケーキだって言って」
群馬にいた頃だけど。
「ん? キッシュはケーキじゃないぞ? モグモグ」
「ふふ。ケーキはわたしと田中のおじいちゃんで毎年作っていたの。って言っても田中のおじいちゃんはつまみ食い担当だったんだけどね」
「ふーん。モグモグ」
「だけど、おじいちゃんはおばあちゃんの事が大好きだからどうしてもケーキをあげたかったらしくて。だから甘くないケーキだって言ってキッシュを作ったの」
「じいちゃんはずっと前から、ばあちゃんの事が好きだったんだな。モグモグ」
「そうだね。今でも時々おばあちゃんに作っているみたいだよ」
「ふーん。モグモグ」
「大好きな相手に作ってもらったご飯ってすごくおいしいよね」
「……ぺるみもか?」
「え? 何が?」
「ぺるみも好きな奴からご飯を作ってもらったら嬉しいか?」
「うん。そうだね」
「ぺるみが一番好きなご飯ってなんだ?」
「ん? なんだろうね。うーん。やっぱりおばあちゃんのおにぎりかな? わたしが作ってもあんな風には作れないんだ」
「おにぎり……」
「うん? どうかしたの?」
「……別に。そっか……早く食べろ。午後の講義が始まるぞ」
「そうだね。えへへ。今日のデザートはアイスクリームだよ」
「……おにぎり」
……?
ベリアルはどうかしたのかな?
「それにしても今日は暑いね……」
「そうだな。いくら魔法石で冷やしていても早くしないとアイスクリームが溶けちゃうよ」
だからベリアルは慌ててご飯を食べているんだね。
「あの……」
ん?
誰かな?
見た事がない女の子が二人いる。
制服を着ているから学生だよね。
「えっと……わたし?」
「……はい。あの……身分が低いのに話しかけて申し訳ありません」
「あぁ。身分制度なら気にしないで? アカデミーでは皆平等だよ?」
「……ありがとうございます。あの……」
「うん? 話しにくい事?」
「お願いがあって……」
「お願い? 何かな?」
「普通科は……その……魔法石の力で涼しいって聞いて」
「……うん?」
「あの……他の建物はすごく暑くて。頭がクラクラするくらいで……」
「え? そうなの? そっか。普通科だけしか冷やしていなかったんだ。もっと早く気づけば良かった。ごめんね」
「え……? もしかして……冷やしてもらえるんですか?」
「もちろんだよ。普通科だけ冷やすなんて不公平だよ」
「不公平? 貴族と王族がいるから……不公平なんて事はないです」
「暑いのは皆一緒でしょう? 身分なんて関係ないよ? あ、そうだ。じゃあ……」
わたしが自分の力でやってもいいけど。
それは人間には秘密だから……
上位精霊にお手伝いしてもらおう。




