どう見ても偽者でしょ!? ~後編~
あれ?
人魚って女体化できるんだよね?
どうしてムキムキの男の姿でわたしの制服を着ているの!?
しかも、わたしの髪にそっくりなウィッグも被っているし。
「あ……声変わり……ですか?」
ジャック!?
天然なの!?
「あら、そうなのよ。うふふ」
そんなわけないでしょ!?
「えっと……ヒヨコ様……なんか……少し見ない間に……育ちましたね……」
「そうなんだ。成長期だな。ははは! ピヨ」
……こっちも低い声で話しているね。
しかも語尾がピヨって……
なんなの……
クラスの皆はこのムキムキ大男が、わたしとベリアルだと本気で思っているの?
まさかね。
優しいから、偽者だって分かっていても気づかない振りをしてくれているんだよね?
「なんだ。やっぱりペリドットとヒヨコ様ですね。いやぁ、偽者かと思ったけど、神様に与えられた身体だから急に成長したんですね。ヒヨコ様は聖獣様だから成長期にすごく大きくなるんですね。交換ノートに書いておかないと……」
ジャック!?
冗談だよね!?
純粋もそこまでいくと怖いよ!?
「あら? ペリドット様にヒヨコ様? ゴンザレス様も……」
クラスルームから出てきた先生が覗き見をしているわたし達に気づいたね。
「先生……先生は、さすがにあの二人が偽者だって気づいていたよね?」
「ふふ。もちろんです。何か事情があるのかと思いまして、そのまま講義をしていましたが……」
「でもでも、クラスの皆は本物だって思い込んでいるよ?」
「ふふ。ペリドット様はいつもわたくし達の想像の数歩先を行かれますから……本物だと思い込んだのかもしれませんね」
「だからって……あのムキムキにお面をつけただけの怪しい大男を本物だと思い込むなんて……」
「中に入って交代したらどうですか? ふふ。皆さん驚くでしょうね」
「そうだね。一刻も早く交代しないと」
よし、中に入るよ!
「あれ? ヒヨコ様? どうかしたんですか?」
ん?
ジャック?
偽ベリアルがどうかしたのかな?
「みずぅ……ピヨォ……」
「え? みずう? ぴよお?」
……!?
水の魔法石の魔力が切れたんじゃないの!?
足元にある水が減っていっているよ!?
あ……!
水がグルグル動いているから見えなかったけど下半身は人魚のままなんだよね?
人魚は本当は陸に上がれないんだよ。
水の魔法石の力で下半身を水に入れて陸にいるのに。
このままじゃ干からびちゃうよ!
「皆! 目を閉じてっ!」
偽わたしと偽ベリアルを空間移動させないと。
空間移動の時は眩しくなるから目を閉じないと大変な事になるんだよ。
「……はあ。なんとかなった……のかな?」
二人を第三地区まで送ってきたけど……
皆はまだ眩しいから目を閉じているね。
今のうちに椅子に座って……と。
「あれ? もう眩しくないかな?」
クラスの皆が目を開け始めたね。
「ん? ペリドット様? ヒヨコ様? あれ? また小さくなったんですか? あ、ゴンザレス様が来たから眩しくなったんですね」
前の席のジャック……
嘘でしょ?
さっきまでの筋肉ムキムキの大男を、本気でわたしとベリアルだと思っていたの?
「……あの……うん。あはは……」
もう、ごまかすしかないね。
「そうですか。あはは。ヒヨコ様は大きくても小さくてもかわいいですね」
……ジャック。
こんなに純粋で、商売をして大丈夫なのかな。
悪い人間に騙されないか心配になるよ。




