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どこの父親も娘を嫁がせたくないんだね

「わたしも……母親なのにダメね。お母様のかわいい赤ん坊……抱っこさせて?」


 お花ちゃんが魚族長から赤ちゃんを渡されたね。


「お母様……」


 赤ちゃんが嬉しそうに笑っているよ。


「ふふ。柔らかい……もう卵ではないのね」


「これからは、たくさん親孝行ができます」


「あなたが幸せそうに笑っている事が何よりもの親孝行よ」


「……お母様はとても優しい瞳です。ペルセポネ様の言う通りでした」


 わたしが話していたのを卵の中から聞いていたんだね。


「お父様にも抱っこさせてくれるかな?」


 熊太郎が赤ちゃんに手を伸ばしたね。


「ふふ。お父様はフワフワで気持ちいいです。ペルセポネ様の言う通りです」


「フワフワか……お父様が怖くない……かな?」


 熊太郎が不安そうに尋ねているね。


「怖いはずがありません。タルタロスでも、この世界に来てからもずっとずっと卵のわたしを守ってくれました。お父様とお母様は自らを化け物と言っていましたが……わたしはその言葉を聞くたびに辛くなりました」


「……辛く……させてしまったのか……」


「お父様とお母様の容姿に辛くなったのではありません。自分の姿を化け物と思うしかなかった環境……虐げられて自分を愛せなくなった心に対して辛くなったのです。わたしはお父様とお母様に自分自身の事も好きになって欲しいのです。わたしを愛するように自分自身の事も……」


「……自分自身を?」


「ペルセポネ様が現れてからは毎日が発見ばかりでした。お父様とお母様の容姿も知る事ができましたし、何よりお父様とお母様の楽しそうな笑い声が聞こえてくる事に心が温かくなりました」


「……そうか」


「だから……一日も早く卵から出ようと考えました。タルタロスや洞窟にいた頃は卵の外が恐ろしくて、このまま卵の中に居続けたいと思っていましたが……こちらに来てからは早くお父様とお母様に抱きしめて欲しいと思うようになりました。ですが、わたしには翼があって……明らかにお父様にもお母様にも似ていない事が分かって。勇気が出ませんでした。娘だと認められなかったらどうしようかと。がっかりされてしまうのではないかと……」


「そんな事はない! むしろ……わたしがこんな容姿だから……がっかりしたのではないか?」


 熊太郎が苦しそうに話しているね。


「お父様はかわいいです。フワフワで……わたしを抱っこしている手がとても優しいです」


 分かるよ。

 熊太郎はフワフワでかわいいんだよね。


「……アマリリス」


「え?」


「わたしのかわいい娘の名だよ。親としての最初の仕事は子の名を考える事だと聞いてね。美しい花の名をつけたくて。ガイア様に色々と花言葉を教えていただいたんだ。アマリリスも卵の中で聞いていたかな?」


「……はい。いくつか候補があったのも聞いています。なぜアマリリスに?」


「アマリリスの花言葉は、おしゃべりで、臆病でそして美しい。君によく似合っているよ。輝くように美しいアマリリス。その美しさは容姿だけではない。内面はもっと美しい。愛しているよ。これからは、毎日触れられる。毎日髪を撫でられるね」


「お父様……はい。わたしも毎日髪を撫でて欲しいです」


「甘えん坊のアマリリス。お願いだから……」


「……え?」


「まだ嫁に行かないでおくれぇぇ」


 ……!?

 熊太郎が泣き始めた!?


「お父様……ふふ。本当にかわいいです」


 アマリリスが熊太郎の頭を撫でているね。

 

「アマリリスゥ! 世界一かわいい娘だぁぁ!」


 これは誰かとパートナーになる時には、かなり揉めそうだね。

 でも……お花ちゃんも熊太郎もすごく幸せそうに見える。

 

 天族からなぜ魔族みたいな容姿の赤ちゃんが産まれるのか……か。

 オケアノスと人間との子孫は皆美しい容姿の人間だったんだよね。

 そして、その子供達には翼が無かった。

 でもアマリリスには翼が生えている。

 それは、両親共に天族だったから?

 もしかして『魔族みたいな容姿の天族』の血を引く子孫は、魔族みたいな容姿にはならないのかな?


 うーん……

 ひとつ真実に近づいたような……

 でも、闇に近い力を持つハデスは天族の姿をしているよね。

 今は闇に近い力で隠しているけど翼もあるし。

 

 やっぱり分からない事ばかりだね。

 

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