恋に真っ直ぐな女の子……なのかな?
「そうだなぁ……魚族長には、あんまりがっつかねぇ方がいいかもしれねぇなぁ。オレは、がっつかれると堪らねぇけどなぁ。うへへ」
野田のおじいちゃん……
そういう癖があるんだね。
時々、野田のおじいちゃんから変態を感じる事があるんだけど……
気のせいかな?
「そうなのですか? 少し控えめな方が良ければそうします。魚族長様……どのようなお方が好みですか?」
意外に素直なんだね。
押しが強いだけじゃないんだ。
「え? わたしの好み……? 考えた事もありませんでした。ずっと魚族達を守る事で精一杯で……恋など無縁でしたから」
「ではではっ! 例えば……この中だと?」
「え? この中!?」
おお……
おばあちゃん達がソワソワし始めたね。
魚族長はムキムキで優しいから皆から人気があるんだよ。
「はい。お雪さんのような強くて優しいお方ですか? それとも、おあいさんのような仲間思いなお方ですか?」
やっぱり卵の中から色々聞いていたんだね。
じゃあ……
わたしの、ど変態もしっかりばれているのか。
「うーん……よく分かりませんが……あなたがわたしに合わせる必要はありません。あなたらしく生きる事が大切だとは思いませんか? 誰かに生き方を押しつけられたら、あなたは今のように輝けなくなってしまいます」
「輝けない?」
「はい。今のあなたはキラキラ輝いて見えますよ? それがあなたらしさだと思います。確かに突然の告白に驚きましたが……誰かに想われるのはとても嬉しいですね」
「……魚族長様。わたし……今のままでも良いのですか?」
「あなたはまだ孵ったばかりでこの世界を見ていません。聞くと見るとでは、全く違います。実際わたしの容姿を見て……まだ恋心は続いているのですか? 美しい天族に出会えば考えは変わるはずです」
「……容姿など何の意味がありますか?」
「え……?」
「わたしは卵の中から外の音をずっと聞いていました。容姿が美しかったとしてもタルタロスにいた天族は恐ろしかった。そして……それから数千年……やっと心の美しい魚族長様に巡り会えたのです。それに……容姿もとても素敵です……」
おお……
赤ちゃんの瞳がウルウルのキラキラになっている。
すごくかわいいよ。
恋する瞳だね。
「それは……まだ、外の世界をよく知らないからで……」
「魚族長様はとても素敵ですっ! 筋肉が想像していたよりもすご……いえ……そうではなくて……あの……容姿は……身体はただの入れ物です。わたしはずっと卵として暮らしてきましたから……そう思うのは変でしょうか」
この赤ちゃん……
孵りたてなのにすでに筋肉フェチなんだね。
わたしも筋肉好きだから仲良くなれるかもしれないよ。
「身体は入れ物……確かに……そうかもしれませんね。ハデス様とぺるみ様が違うお身体でもまた巡り会えたように……大切なのは心なのかもしれません」
「魚族長様は……あの……」
「……? はい?」
「ペルセポネ様の事を……愛……しているのですか?」
……?
魚族長がわたしを?
「え? 愛……ですか?」
魚族長も突然の質問に驚いているね。
「……わたしは卑怯です。先程好きな女性を尋ねた時にペルセポネ様の名を出しませんでした。……怖かったのです。ペルセポネ様を愛していると言われたら……勝てないから……」
勝てない?
何に?
まさか……わたしの『変態』に勝てないと思っているんじゃないよね?
「確かにぺるみ様はとても大切ですが、それは赤ん坊の頃からお世話をしていた……そうですね……甘えん坊のかわいい娘のような感じで……」
「娘!? では恋心は無いのですね?」
「はい。……ははっ。あなたはかわいらしいですね」
「か……かわいらしい……?」
おぉ……
赤ちゃんが真っ赤になっているよ。
すごくしっかりして大人びているけど、魚族長と話している時は幼い感じがしてかわいいね。




