好きな気持ちが強過ぎて抑えられなくなる時ってあるよね
「こちらに来てからずっと……魚族長様の気配に……胸が高鳴って……あの……わたしが大きくなるまで……まだかなりかかるはずですが……パートナーにしてくださいっ!」
赤ちゃんが真っ赤になりながら話しているけど……
「……はいぃぃぃぃいいいっ!?」
魚族長が驚いて変な声を出しているね……
確かに孵りたての赤ちゃんからプロポーズされたら驚くのも無理はないけど……
「容姿は赤ん坊ですが知能は数千歳です。ずっと卵の中で生きていましたから」
「え? え? え? いや……わたしのどこが……わたしは魔族ですよ? それにあなたは美しい天族の容姿ですし、とても賢そうです。わたしよりも天族のパートナーになった方が……」
「天族には良い印象がなくて……もちろんペルセポネ様達は素晴らしいですが、タルタロスでは酷い天族からずっと虐げられていましたから。それに……魚族長様の『音』は心地良くて」
「わたしの……音?」
「魚族長様にも聞こえているのではありませんか? 心の音が」
「……! それは……」
心の音?
心の声じゃなくて?
「初めてです。両親以外でこの音を聞いたのは……いえ。違いますね。タルタロスにいた頃には聞いた事がありました」
……?
タルタロスでは聞いた?
お花ちゃんと熊太郎からもその音がするの?
じゃあ、コットス達からも?
まさか……
天族から生まれた容姿が違う皆から何か音がするの?
魚族長は、ポセイドンと上位精霊のネーレウスの娘さんの子なんだよね。
でも、そうなるとオケアノスの子孫であるベリス族やイフリート族からもその音がするんじゃないかな。
卵ちゃんの時に何度か会っていたはずだよね?
どうしてベリス王達からはその音がしないのかな。
「確かに……あなたやお花さん達からは独特な音が聞こえてきますが……」
「今はまだ赤ん坊ですが……わたしは魚族長様を他の誰にも取られたくありません! わたしだけの魚族長様でいて欲しいのです!」
「……え? あの……ですが……まだ会ったばかりですし……赤ん坊ですし。それを受け入れたらわたしは犯罪者では……?」
「では……成長すればわたしをパートナーとして考えられますか?」
すごいね。
積極的過ぎて魚族長が困っているのが分かるよ。
幼女好きのウリエルだったら大喜びしそうだけどね。
「あの……申し訳ありません。やはり……わたしは魔族ですから。お友達ならまだしもパートナーとなると……あなたは美しい天族ですし……」
「魚族長様でないと嫌なのです! 孵ったばかりでおかしいと思われるかもしれませんが……運命を感じたのです」
「運命……あの……ですが……困ったな……」
「ははは! まぁ、そう急ぐな。愛しい奴を誰にも取られたくねぇ気持ちもよく分かるけどなぁ。あまり積極的過ぎると引かれちまうぞ?」
おお!
雪あん姉……
大人の余裕を感じるね。




