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それぞれの考える幸せ

「どうしよう……わたしのせいで……ごめんなさい……どうしよう」


 全部わたしのせいだ…… 

 お花ちゃんと熊太郎が守ってきた卵ちゃんにヒビが……


「それは違うぞ? 見ろ」


 吉田のおじいちゃんが卵ちゃんのヒビを指差している?

 あ……

 中から卵を割って出てこようとしているんだ。


「あぁ……ついに……」

「やっと……わたし達の子が……」


 お花ちゃんと熊太郎が卵を心配そうに見守っている。


「……ふぅ。やっと出られそうです」


 ……!?

 卵からかわいい声が聞こえてきたけど……

 いきなりこんなに話せるの!?


「……!」

「まさか……そんな……」


 お花ちゃんと熊太郎が膝から崩れ落ちた……?

 一体何があったの?


「はじめまして。お父様お母様」


 ……天族の……翼?

 天族の姿の赤ちゃん……

 首がすわっているね。

 人間の赤ちゃんなら三か月くらいの大きさかな?

 でも、お花ちゃんにも熊太郎にも似ていない。

 どうして?


「悲しまないでください。わたしは、ずっと卵の中から聞いていました。お父様とお母様が容姿の事で苦しんでいる事も知っています。だから……出てこられなかったのです」


 すごく、しっかりしているね。

 賢そうだ。

 

「わたし達に気を遣って出てこなかったの?」

「そんな……わたし達は、どうしたら……この子は……娘は天族の容姿だ。天界で暮らした方が……だが……」


「お父様お母様。わたしは天界には行きません」


「でも……どう見ても……わたし達とは……」

「天界で誰かに養女に……」


「それがお二人の考える幸せですか?」


「え……?」

「こんな容姿のわたし達といるよりその方が幸せに決まっている……」


「なぜですか?」


「なぜ?」

「また……いつかわたし達が捕らえられたら……共に捕まってしまうかもしれない」


「そうなるのですか? 子にとって親と暮らす以外の幸せは考えにくいものですが……」


「……え?」

「それは……」


「ペルセポネ様。そうなりますか?」


 この子……

 怖いくらいに頭がいい。

 わたしがなんて返事をするか分かっているみたいだ。

 今まで卵の中から全てを聞いていたんだね。

 酷い環境の音を聞いていたから大人びているのかな?


「あなたは……ずっとお花ちゃんと熊太郎と一緒にいたいんだね」


「はい」


「ふふ。真っ直ぐな瞳だね。お花ちゃんと熊太郎を捕らえようとする奴がいたらわたしが赦さないよ。二度とそんな事ができなくしてあげる」


 これが求めた答えだよね?


「ありがとうございます」


「でも……どうして急に出てくる気になったの?」


「それは……あの……」


 ん?

 魚族長を見て真っ赤になっている?


「え? どうかしたの? 日に焼けちゃった? でも、ここは日に焼けない結界が張ってあるから……」


「日に焼けるとは……なんですか?」


「ああ。あの空にある太陽の光に当たり続けると皮膚が赤くなった後に黒くなるの」


 ……そういえばどうして太陽があるのかな?

 月もあるし。

 宇宙が存在しているの?


「そうですか。それが日に焼ける……なのですね。あの……魚族長様に……パートナーは……いますか?」


 赤ちゃんが恥ずかしそうに尋ねているけど……


「……はい?」


 魚族長が固まっているね。

 これってまさか……


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