知恵熱なんて恥ずかしいよ(6)
「どうかしたの?」
ベリアルがつぶらな瞳でわたしを見つめている。
「なんでもない……オレもおにぎりを食べるぞ! いただきますっ! 魚のおにぎりだ。うまぁぁぁぁい! モグモグ……」
ふふ。
そうだろうね。
ベリアルの苦手な梅干しのおにぎりはわたしが持っているんだから。
「ぺるぺるもベリアルもおにぎりが好きなんだなぁ」
吉田のおじいちゃんがニコニコしながら広場に歩いてきたね。
「うん! おばあちゃんのおにぎりは最高だよ」
「そうか、そうか。ところでぺるぺるは知恵熱は大丈夫なんか?」
……!?
おにぎりが変なところに入っちゃった。
「ゴホッゴホッ」
「熱の方は大丈夫そうだなぁ。良かった良かった」
……!?
すごくニヤニヤしているよ!?
……よく見たら他の皆もわたしを見ながらニヤニヤしている。
しかも、成長した孫を見て喜ぶ祖父母の顔になっているよ。
そのうち赤飯でも炊くかとか言い出しそうだよ!?
「ゴホッ……笑いたいなら笑えばいいよっ! そうだよ! わたしは赤ちゃんの作り方を知って知恵熱を出した、ど変態なんだよっ!」
「ブハッ!」
……!?
お花ちゃんがすごい勢いでお茶を吹き出したよ!?
「お花ちゃん……大丈夫?」
「あ……はい。大丈夫……です。ゴホッゴホッ」
「ごめんね。大声で変な事を叫んだから……」
「大丈夫ですよ……って……卵が……無い……!?」
「……え? 卵ちゃんがいないの?」
「先程までは抱っこして……ああっ!」
え?
何?
「うわあぁぁぁああ! 卵ちゃんが転がっていく! 誰か……とめてぇぇぇ! 海に入っちゃううう!」
どうしよう!
わたしのせいだよ!
って……
おかしくない?
卵が曲がらずに真っ直ぐ海に向かって転がっているよ。
「ぺるみ様……大丈夫ですよ」
え?
魚族長?
「あぁ……良かった……ありがとう。助かったよ」
身体が震えて上手く歩けない。
「かわいい卵ですね。確かお花さんと熊太郎の卵でしたか?」
魚族長が卵ちゃんを抱っこしながら陸に上がってくると、お花ちゃんに渡してくれた。
はあ……
良かった。
海に流されなくて本当に良かったよ。
それにしても……
魚族長とお花ちゃんはよく似ているね。
「ありがとうございます。助かりました。確か……魚族長さんでしたね」
「はい。『さん』は、いりませんよ? あ……お花さん……?」
「……え?」
「卵の中から音がしますよ?」
「え? 音が?」
「わたしは耳が良くて……え? 『素敵』? 聞き間違い? ああ! 卵にヒビが……!」
「ええ!? ヒビ!? ああ……わたしが落としたから……ずっと守ってきたのに……」
お花ちゃんが震えている……
どうしよう……
わたしが大声で変な事を言ったからだよ。




