知恵熱なんて恥ずかしいよ(5)
おばあちゃんの家の扉からこっそり外を見ると、皆がいつも通りに過ごしている。
意外に皆は、なんとも思っていないのかも。
わたしの考え過ぎかな?
広場に歩いて行くとおばあちゃんが話しかけてくる。
「ぺるみ? もう大丈夫なんか?」
「うん。昨日はありがとう」
「熱が下がれば安心だな。ほれ、早く朝飯を食え」
皆もいつも通りにしているし……
良かった。
普段から変態だと思われているからなのかも。
あぁ……
変態で良かった。
「うん! えへへ。安心したらお腹空いたよ」
何から食べようかな?
うーん?
「あ! ばあちゃん見つけた! うわあぁぁん! ぺるみがいじめるよぉ」
……!?
ベリアル!?
「ベリアルはどうしたんだ?」
「うわあぁぁん! ぺるみが知恵熱を出した事をアカデミーで話したらオレの秘密も話すって脅迫してきたんだあああ!」
ベリアル……
そんなふうに言ったら、ベリアルにも話されたくない事があるって皆にも知られちゃうんじゃないかな?
「そうか、そうか。そりゃぺるみが悪いなぁ」
このままだとおばあちゃんに叱られちゃう!
「おばあちゃん! ベリアルだって酷いんだよ!? アカデミーでわたしが知恵熱を出した事を話すって言うんだから」
「そうか、そうか。そりゃベリアルも悪いなぁ」
「ぺるみはいつも変態だけどオレはかわいいヒヨコちゃんなんだ! オレのイメージが壊れちゃうだろ!?」
イメージが壊れちゃう?
ぐふふ。
自意識が高いヒヨコちゃんも堪らないね。
「いいじゃない。ちょっぴりエッチなヒヨコちゃんなんて最高だよ? ぐふふ。オプションは多い方がいいんだよ」
「オプ……? うわあぁぁん! またぺるみが意味の分からない事を言い始めたよぉ!」
泣き叫ぶヒヨコちゃんも激かわだね。
「ははは。まあ、いいじゃねぇか。二人とも早く朝飯を食え。ほれ、ベリアルの好きなおにぎりもあるぞ?」
おばあちゃんは、わたしとベリアルがケンカをするといつも楽しそうにしているよね。
「うぅ……ぺるみは変態だけど、おにぎりはおいしそうだな」
「ちょっと……そこにわたしの変態は関係あるの!?」
「とにかく! オレの秘密を話したら赦さないからなっ!」
「んもう……わがままなんだから。そんなところも激かわだけどねっ!」
「……本当に救いようがないな」
あ!
早くおにぎりの中身を闇の上位精霊のシェイドに訊かないと!
(ぺるみ……端の三つがウメボシ)
シェイド。
もう見分けてくれたんだね。
ありがとう。
最近はご飯の前になると毎回来てくれるんだよね。
「えへへ。わたしが先におにぎりを食べちゃうもんねっ!」
いっぺんに三つ持ったけど……
おばあちゃんのおにぎりは、いくつでも食べられるよ。
「……ぺるみ」
ん?
ベリアルが感謝しているみたいな顔になった?
気のせいかな?




