お父様はだいたい縛られているよね
天界の執務室の前に空間移動すると慌てて扉を開ける。
「お父様っ! あれ? いない?」
ここにはいないのか……
どこにいるんだろう?
おばあちゃんにちゃんと聞いておけばよかった。
ヘラの宮殿にいるのかな?
確かヘラの宮殿はお母様の宮殿の近くだよね。
空間移動を……
「うわあぁぁぁん!」
……!?
お父様の声!?
どこから?
ああ……
執務室の奥の部屋から聞こえてきたのかな。
確かベットが置いてある部屋だよね。
「お父様……?」
ゆっくり扉を開けるとヘスティアの縄で縛られたお父様の姿が見える。
「ああっ! ペルセポネェェ」
お父様が泣いているね。
今度は何をしたのかな。
「ヘスティア……今度は何があったの? あれ? ヘラは?」
「ペルセポネ、来たのね。ヘラは、あそこよ?」
ん?
あそこ?
確かにベットが膨らんでいるけど。
「ヘラ? どうかしたの?」
「うぅ……ペルセポネ……ゼウスってば酷いの」
ヘラが泣くなんて……
お父様がよほど酷い事をしたんだね。
「今度は何をしたの?」
でも浮気をしたならもっと怒り狂っているはずだよね。
「新しいドレスを着たのに似合わないって言うの……」
「え……?」
「一番にゼウスに見せて褒められたかったのに……」
ヘラ……
それで泣いていたの?
なんか、かわいいね。
いつもは怪力で、すごく強いのに。
「……お父様? こんなに似合っているのにどうしてそんな事を言ったの?」
「だって……ヘラちゃんには、もっとフワフワのドレスの方が似合うよ? 天界のドレスは地味なんだもん。ほら、ベリス王の売っているドレスの方がキラキラでフワフワでヘラちゃんに似合いそうでしょ? それに、そのドレスは胸の所が開き過ぎだよ。そこを見ていいのはお父様だけなんだからぁっ!」
「……ゼウス! わたし……誤解して……ごめんね?」
ヘラ……
なんて簡単なの?
「ヘラちゃん……大好きっ!」
「もう……ペルセポネが見ているわよ?」
この二人は……
毎回最後はこうなるんだよ。
「ふふ。もうお仕置きはおしまいなの? 今回は早く終わったわね。縄は解いておくわよ……って聞いていないわね。はぁ……ペルセポネ、もう行きましょう?」
呆れているヘスティアと、空間移動でお母様の宮殿に向かう。
「あの二人はいつもああなの?」
「ふふ。最終的にはいつもああなるからまともに相手をしたらダメよ? わたしはゼウスを縛るのが楽しいから手伝うけど」
「縛るのが楽しいって……それでお母様も自分の宮殿に戻っていたんだね」
「そうよ。まぁ、あの二人はケンカしてもすぐ仲直りするからまともに関わるとバカらしくなるのよ」
ヘスティアの言う通りだね。
「ヘスティア、もう終わったの? あら? ペルセポネ? 遊びに来たの? ふふ。嬉しいわ」
お母様が抱きしめてくれたね。
「お父様が古典的な罠に捕まる夢を見て、心配で」
「古典的な罠……ふふ。ペルセポネは優しいのね」
「とりあえずお父様が無事で安心したよ」
「ゼウスは、しぶといから大丈夫よ。それより眠らなくて平気なの? 昨夜も寝ていないでしょう?」
「うん……安心したら眠くなってきたよ」
「ふふ。幸せの島でハデスが待っているわよ?」
「ハデスは……」
「あら? ケンカでもしたの?」
「ううん。『はつたいけんとママショーの女』は何か尋ねたらお父さんと慌てて魔王城に行っちゃったの」
「……? はつた……? 何かしら」
「わたしには『初体験』とか『魔性の女』って聞こえたんだけど、ベリアルがそれは『はつたいけんとママショーの女』だって教えてくれたの」
「……ぷっ! 初体験……ふふ。それでハデスは逃げたのね」
「お母様?」
「ベリアルは容姿だけじゃなくて考え方もかわいいのね」
「……? よく分からないけど確かにベリアルは超絶かわいいよね」
「ねぇ、デメテル? このままだとハデスも大変でしょうから教えてあげたらどうかしら。デメテルだって早く孫が欲しいでしょう?」
……?
ヘスティアがお母様に話しているけど……
孫?
ハデスが大変って何?




