お父様は本当に手がかかるんだから
「おばあちゃんの匂い……好き」
抱きしめているおばあちゃんの甘い匂いに心が温かくなる。
「そうか、そうか。頑張ってるぺるみにプリンを食わせたくてなぁ」
「えへへ。プリンは一日ひとつまで……懐かしいな」
「月海はプリンばっかり食いたがってなぁ。腹を壊してからは一日ひとつになったんだよなぁ」
「だって、おばあちゃんのプリンはおいしいんだもん」
「そうか、そうか。ぺるみは甘えん坊だなぁ」
「今日は、おばあちゃんと一緒に寝たいな」
「ははは! ハデスちゃんも忙しそうだしなぁ。久しぶりにばあちゃんと一緒に寝るか」
「うん!」
群馬にいた頃みたいだ。
おばあちゃんに抱きしめられて眠りにつく。
すごく良い夢が見られそうだよ……
って思ったのに……
田中のおじいちゃんだったお父様が、詐欺師に布団を買わされた夢を見ちゃったよ。
「ぷっ! ぺるみはずっと、うなされてたぞ?」
「うぅ……どれくらい寝たんだろう」
「ははは! まだ五分くれぇだ」
「……お父様は夢の中でまでお父様だったよ」
「まぁ、あの天ちゃんだからなぁ。ははは。ほれ、次こそ良い夢が見られるようにばあちゃんが子守唄を歌ってやろうなぁ」
「本当? やったぁ!」
「ぺるみはいつまで経っても赤ん坊だなぁ」
「えへへ。わたしは、ずっとずうっとおばあちゃんのかわいい赤ちゃんだもん」
「ははは! そうだなぁ……ぺるみ?」
「うん?」
「ありがとう……」
「ん? 何が?」
「天界の光になって……天界を守るって言わねぇでくれて……本当にありがとう」
「少し前のわたしならそう考えたかもしれない……でも……今は違うよ?」
「そうだなぁ……ぺるみは強くなったからなぁ」
「わたしに出会ってくれた皆が、わたしを強くしてくれたの。前を向かせてくれたの」
「立派だなぁ……小さくてピーピー泣いてた月海がいつの間にか素敵なお姉さんになったんだなぁ」
「うぅ……ピーピー泣いてないもん」
「ははは! そうか、そうか」
おばあちゃんが髪を撫でながら子守唄を歌い始める。
優しい声に穏やかな気持ちになる。
今度こそ……
楽しい夢が見られますように……
って!
今度はお父様が古典的な罠に捕まる夢を見たよ!?
……まさか……お父様が今危険な目に遭っている虫の知らせ的なやつ!?
「うぅ……おばあちゃん……わたしちょっと天界に行ってくる」
「そうか? ……どれ。天界はどうなってる? そうだなぁ……行ってやれ。天ちゃんにも困ったもんだ。早く行かねぇと天ちゃんが隠し部屋の光に取り込まれちまいそうだぞ?」
おばあちゃんがお父様の様子を見てくれたみたいだね。
ん?
「今、隠し部屋の光に取り込まれるって言った? それって自害させられそうっていう事!?」
「ヘラ達をかなり怒らせたみてぇだなぁ。早く行ってやれ」
「うん! 行ってくるよ!」
お父様ってば……
今度は一体何をやらかしたの?
すぐに行くから待っていてね!




