おばあちゃんの匂い……大好きだよ
「おばあちゃん……まだ広場にいたんだね」
まずいよ……
盗み聞きがしっかりバレている。
「謝りに行ったんじゃねぇんか?」
「うぅ……だってイチゴと恋はどっちが甘いのかなんて……ぐふふ。堪らないよね」
「……最近神力が有り余ってるみてぇだなぁ」
「ん? そうみたいだよ。昼間も神力が溢れ出しちゃったし。この力を使えたらいいんだけど……」
天界の隠し部屋の神力になんとかして取り込めないかな。
「あれは自害した天族の神力しか取り込めねぇからなぁ」
あ……
おばあちゃんは口に出しているけど……
普通に話していいのかな?
「今、群馬からブラックドラゴンのおじいちゃんが来ているでしょう? 何か方法がないか訊いてみたらどうかな?」
「ブラックドラゴンか……確かに……まだ天族だった頃からあの隠し部屋の存在を知ってたからなぁ」
「そうなんだね」
「浮遊島を創る時にあの神力を使わなかったのは偉いよなぁ。今でもちゃんと自分の神力で賄ってるからなぁ」
「ブラックドラゴンのおじいちゃんの溜めていた神力はまだ天界にあるんだよね?」
「そうだ。誰にも分からねぇ場所に隠してある」
「うーん……生きているのに神力を溜められた……でも、隠し部屋の光の方は自害した天族からしか神力を取り込めない……か」
「そうだなぁ……」
「じゃあ……どうして隠し部屋の神力の光は自害した天族からしか神力を取り込めないの?」
「それは……まぁ色々あってなぁ」
「……色々……か」
なんだか、話しにくそうだね。
「今でも……アレだけどなぁ……」
……話してくれるのかな?
「……うん。自害をする天族は珍しいんだよね?」
「そうだなぁ……だから……ぺるみの想像通りだ。あの神力の光は『自害させられた罪人』の神力が溜め込まれてるんだ」
「そうなんだね……」
やっぱり……
「でも……中には自らの意思で自害する天族もいるけどなぁ」
「……うん。自害させられた罪人の神力で浮かぶ天界……か」
「そうだなぁ……ぺるみが言うみてぇにどっかに引っかけられりゃいいんだけどなぁ。そうすりゃ、あの隠し部屋の光に神力を入れ込まなくても済むんだ」
「わたしの溢れ出る神力をとりあえずどこかに溜めて、それを加工して隠し部屋の光に入れられないかな?」
「うーん……それができればなぁ……でも……取り込めるのは自害した天族の神力って決まっててなぁ……」
「そうだよね……でも……やっぱり……できる事は、やりたいよ。ねぇ、おばあちゃん? わたしの神力をあの隠し部屋に溜めておけないかな?」
「……今ある光とは別にぺるみの神力を溜めるんか?」
「うん。とりあえず隣に置いてあったら仲良くなってひとつになるかも!」
「……!? ぷっ! あはは! そうか、そうか。ぺるみらしいなぁ……」
「うぅ……バカみたいだと思ったんでしょ……でもやれる事は、やりたいんだもん。これからはおばあちゃん一人に全部背負い込ませたくないんだもん」
「ぺるみ……そうだなぁ。かわいい孫娘の考えを試してみるか」
「えへへ。かわいい孫娘?」
「そうだぞ? 世界一かわいい孫娘だ」
おばあちゃんに抱きつくと甘い匂いがする。
何の匂いかな?
あぁ……
そうだ。
群馬にいた頃、毎日作ってくれたプリンの匂い……




